「ウアッ」一ひとつかみほどの塊茎が、ロンの頭の上の「マント」に落ち、ロンが振り落とそうとしている間は、ヌルヌルした緑色の塊茎が宙を漂うという、ありえない状態になった。
「誰かそこに姿を隠しているぞ」
仮面の死喰い人が一人、指差して叫んだ。
ディーンがその隙すきを衝ついて、一瞬いっしゅん気を逸そらしたその死し喰くい人びとを「失神しっしんの呪文じゅもん」で倒した。仕返ししようとしたドロホフを、パーバティが「全ぜん身しん金かな縛しばり術じゅつ」で倒した。
「行こう」ハリーが叫さけんだ。三人は「マント」をしっかり巻きつけて頭を低くし、戦う人々の間をスナーガラフの樹じゅ液えき溜だまりで足を滑すべらせながら、大だい理り石せきの階段の上へ、そして玄げん関かんホールへと飛ぶように走った。
「僕はドラコ・マルフォイだ。僕はドラコだ。味方だ」
ドラコが上の踊おどり場ばで、仮面の死喰い人に向かって訴うったえていた。ハリーは通りがかりにその死喰い人を「失神」させた。マルフォイは救い主に向かってにっこりしながらあたりを見回したが、ロンが「マント」の下からパンチを食くらわした。マルフォイは死喰い人の上に仰向あおむけに倒れ、唇くちびるから血を流して、さっぱりわけがわからないという顔をしていた。
「命を助けてやったのは、今晩これで二回目だぞ、この日和ひより見みの悪党」ロンが叫んだ。
階段も玄関ホールも戦せん闘とう中ちゅうの敵味方であふれていた。どこを見ても、死喰い人が見えた。ヤックスリーは玄関の扉とびら近くでフリットウィックと戦い、そのすぐ脇わきでは、仮面の死喰い人がキングズリーと一いっ騎き打うちしていた。生徒たちは四方八方に走り回り、傷きずついた友達を抱えたり引きずったりしている生徒もいた。ハリーは仮面の死喰い人に「失神の呪文」を発射はっしゃしたが、逸れて危うくネビルに当たるところだった。ネビルは両手一杯の「有毒ゆうどく食しょく虫ちゅう蔓づる」を振り回して、どこからともなく現れていた。蔓は嬉き々きとしていちばん近くの死喰い人に巻きついて、手た繰ぐり寄せはじめた。
ハリー、ロン、ハーマイオニーは、大だい理り石せきの階段を駆かけ下りた。左側の砂時計が大破し、スリザリン寮りょうの獲得かくとくした点を示すエメラルドがそこら中に転がり、走り回る敵も味方も滑ったりつまずいたりしていた。三人が玄関ホールに下りたとき、階段上のバルコニーから人が二人落ちてきた。そして灰色の影が――ハリーは何かの動物だと思ったが――玄関ホールの奥からまさに獣けもののように走ってきて、落ちてきた一人に牙きばを立てようとした。