「しかし、わが君、あなた様以外の者に誤あやまって殺されてしまうかもしれず――」
「死し喰くい人びとたちには、明確な指示を与えておる。ポッターを捕とらえよ。やつの友人たちは殺せ――多く殺せば殺すほどよい――しかし、あやつは殺すな、とな」
「しかし、俺様が話したいのは、セブルス、おまえのことだ。ハリー・ポッターのことではない。おまえは俺様にとって、非常に貴重だった。非常にな」
「私めが、あなた様にお仕つかえすることのみを願っていると、わが君にはおわかりです。しかし――わが君、この場を下がり、ポッターめを探すことをお許しくださいますよう。あなた様の許もとに連れて参ります。私にはそれができると――」
「言ったはずだ。許さぬ」
ヴォルデモートが言った。ハリーは、もう一度振り向いたヴォルデモートの眼めが、一瞬ギラリと赤く光るのを見た。そして、マントを翻ひるがえす音は、蛇へびの這はう音のようだった。ハリーは、額ひたいの焼けるような痛みで、ヴォルデモートのいらだちを感じた。
「俺様おれさまが目下気がかりなのは、セブルス、あの小僧こぞうとついに顔を合わせたときに何が起こるかということだ」
「わが君、疑問の余地はありません。必ずや――」
「――いや、疑問があるのだ、セブルス。疑問が」
ヴォルデモートが立ち止まった。ハリーは再びその姿をはっきり見た。青白い指にニワトコの杖つえを滑すべらせながら、スネイプを見み据すえている。
「俺様の使った杖が二本とも、ハリー・ポッターを仕損しそんじたのはなぜだ」
「わ――私めには、わかりません、わが君」
「わからぬと」
怒りが、杭くいを打ち込むようにハリーの頭を刺した。ハリーは痛みのあまり叫さけび声を上げそうになり、拳こぶしを口に押し込んだ。ハリーは目をつむった。すると突然ハリーはヴォルデモートになり、スネイプの蒼白そうはくな顔を見下ろしていた。