「きみは魔法の力をたくさん持っている」スネイプが言った。「僕にはそれがわかったんだ。ずっときみを見ていたから……」
スネイプの声は先細りになった。リリーは聞いていなかった。緑豊かな地面に寝転ねころんで体を伸ばし、頭上の林りん冠かんを見上げていた。スネイプは、遊び場で見ていたときと同じように熱っぽい目で、リリーを見つめた。
「お家うちの様子はどうなの」リリーが聞いた。
スネイプの眉間みけんに、小さなしわが現れた。
「大丈夫だ」スネイプが答えた。
「ご両親は、もうけんかしていないの」
「そりゃ、してるさ。あの二人はけんかばかりしてるよ」
スネイプは木の葉を片手につかみ取ってちぎりはじめたが、自分では何をしているのか気づいていないらしかった。
「だけど、もう長くはない。僕はいなくなる」
「あなたのパパは、魔法が好きじゃないの」
「あの人は何にも好きじゃない。あんまり」スネイプが言った。
「セブルス」
リリーに名前を呼ばれたとき、スネイプの唇くちびるが微かすかな笑いで歪ゆがんだ。
「何」
「吸きゅう魂こん鬼きのこと、また話して」
「何のために、あいつらのことなんか知りたいんだ」
「もしわたしが、学校の外で魔法を使ったら――」
「そんなことで、誰もきみを吸魂鬼に引き渡したりはしないさ 吸魂鬼というのは、本当に悪いことをした人のためにいるんだから。魔法使いの監かん獄ごく、アズカバンの看かん守しゅをしている。きみがアズカバンになんか行くものか。きみみたいに――」
スネイプはまた赤くなって、もっと葉をむしった。すると後ろでカサカサと小さな音がしたので、ハリーは振り向いた。木の陰に隠れていたペチュニアが、足場を踏ふみ外はずしたところだった。