ペチュニアの色の薄うすい目が、プラットフォームをぐるりと見回した。飼かい主の腕の中でニャーニャー鳴いている猫や、籠かごの中で羽ばたきしながらホーホー鳴き交わしているふくろう、そして生徒たち。中には、もう裾すそ長ながの黒いローブに着き替がえている生徒もいて、紅くれないの汽車にトランクを積み込んだり、夏休み後の再会を喜んで歓かん声せいを上げ、挨あい拶さつを交わしたりしている。
「――私が、なんでそんな――そんな生まれそこないになりたいってわけ」
ペチュニアはとうとう手を振りほどき、リリーは目に涙を溜ためていた。
「わたしは生まれそこないじゃないわ」リリーが言った。「そんな、ひどいことを言うなんて」
「あなたは、そういうところに行くのよ」
ペチュニアは、リリーの反応をさも楽しむかのように言った。
「生まれそこないのための特とく殊しゅな学校。あなたも、あのスネイプって子も……変な者同士。二人ともそうなのよ。あなたたちが、まともな人たちから隔離かくりされるのはいいことよ。私たちの安全のためだわ」
リリーは、両親をちらりと見た。二人ともその場を満まん喫きつして、心から楽しんでいるような顔でプラットフォームを見回していた。リリーはペチュニアを振り返り、低い、険けわしい口調で言った。
「あなたは、変人の学校だなんて思っていないはずよ。校長先生に手紙を書いて、自分を入学させてくれって頼み込んだんだもの」
ペチュニアは真っ赤になった。
「頼み込む そんなことしてないわ」
「わたし、校長先生のお返事を見たの。親切なお手紙だったわ」
「読んじゃいけなかったのに――」ペチュニアが小声で言った。「私のプライバシーよ――どうしてそんな――」
リリーは、近くに立っているスネイプにちらりと目をやることで、白状したも同然だった。
ペチュニアが息を呑のんだ。
「あの子が見つけたのね あなたとあの男の子が、私の部屋にこそこそ入って」
「違うわ――こそこそ入ってなんかいない――」
こんどはリリーがむきになった。
「セブルスが封ふう筒とうを見たの。それで、マグルがホグワーツと接触せっしょくできるなんて信じられなかったの。それだけよ セブルスは、郵便局に、変へん装そうした魔法使いが働いているに違いないって言うの。それで、その人たちがきっと――」
「魔法使いって、どこにでも首を突っ込むみたいね」
ペチュニアは赤くなったと同じくらい青くなっていた。
「生まれそこない」
ペチュニアは、リリーに向かって吐はき捨てるように言い、これ見よがしに両親のいるところへ戻っていった……。