「でも、あの人たちは、闇の魔術を使わないわ」リリーは声を低くした。「それに、あなたはとても恩知おんしらずよ。このあいだの晩に何があったか、聞いたわ。あなたは『暴あばれ柳やなぎ』のそばのトンネルをこっそり下りていって、そこで何があったかは知らないけれど、ジェームズ・ポッターがあなたを救ったと――」
スネイプの顔が大きく歪ゆがみ、吐はき棄すてるように言った。
「救った 救った きみはあいつが英雄だと思っているのか あいつは自分自身と自分の仲間を救っただけだ きみは絶対にあいつに――僕がきみに許さない――」
「わたしに何を許さないの 何を許さないの」
リリーの明るい緑の目が細い線になった。スネイプはすぐに言い直した。
「そういうつもりじゃ――ただ僕は、きみが騙だまされるのを見たくない――あいつは、きみに気がある。ジェームズ・ポッターは、きみのことが好きなんだ」
言葉がスネイプの意に反して、無理やり出てきたかのようだった。
「だけどあいつは、違うんだ……みんながそう思っているみたいな……クィディッチの大物ヒーローだとか――」
スネイプは、苦にが々にがしさと嫌けん悪お感かんとで支し離り滅めつ裂れつになっていた。リリーの眉まゆがだんだん高く吊つり上がっていった。
「ジェームズ・ポッターが、傲ごう慢まんでいやなやつなのはわかっているわ」
リリーは、スネイプの言葉を遮さえぎった。
「あなたに言われるまでもないわ。でも、マルシベールとかエイブリーが冗談じょうだんのつもりでしていることは、邪じゃ悪あくそのものだわ。セブ、邪悪なことなのよ。あなたが、どうしてあんな人たちと友達になれるのか、わたしにはわからない」
マルシベールとエイブリーを非難するリリーの言葉を、果たしてスネイプが聞いたかどうかは疑わしいと、ハリーは思った。リリーがジェームズ・ポッターをけなす言葉を聞いたとたん、スネイプの体全体が緩ゆるみ、二人でまた歩き出したときには、スネイプの足取りは弾はずんでいた……。
そして場面が変わった……。