「死し喰くい人びとが、わしに何の頼みがあると言うのじゃ」
「あの――あの予言は……あの予測は……トレローニーの……」
「おう、そうじゃ」ダンブルドアが言った。「ヴォルデモート卿に、どれだけ伝えたのかな」
「すべてを――聞いたことのすべてを」スネイプが言った。「それがために――それが理由で――『あの方』は、それがリリー・エバンズだとお考えだ」
「予言は、女性には触ふれておらぬ」ダンブルドアが言った。「七月の末に生まれる男の子の話じゃ」
「あなたは、私の言うことがおわかりになっている 『あの方』は、それがリリーの息子のことだとお考えだ。『あの方』はリリーを追いつめ――全員を殺すおつもりだ――」
「あの女ひとがおまえにとってそれほど大切なら――」ダンブルドアが言った。「ヴォルデモート卿はリリーを見逃してくれるに違いなかろう 息子と引き換えに、母親への慈じ悲ひを願うことはできぬのか」
「そうしました――私はお願いしました」
「見み下さげ果てたやつじゃ」ダンブルドアが言った。
ハリーは、これほど侮蔑ぶべつのこもったダンブルドアの声を、聞いたことがなかった。スネイプはわずかに身を縮めたように見えた。
「それでは、リリーの夫や子どもが死んでも気にせぬのか 自分の願いさえ叶かなえば、あとの二人は死んでもいいと言うのか」
スネイプは何も言わず、ただ黙だまってダンブルドアを見上げた。
「それでは、全員を隠してください」スネイプはかすれ声で言った。「あの女ひとを――全員を――安全に。お願いです」
「その代わりに、わしには何をくれるのじゃ、セブルス」
「か――代わりに」
スネイプはぽかんと口を開けて、ダンブルドアを見た。ハリーはスネイプが抗議こうぎするだろうと予想したが、しばらく黙だまったあとに、スネイプが言った。
「何なりと」