「もしかして二人が――忙しかったら――そして君にそういう機会があったら――」
「蛇を殺すの」
「蛇を殺してくれ」ハリーが繰り返した。
「わかったよ、ハリー。君は、大丈夫なの」
「大丈夫さ。ありがとう、ネビル」
ハリーが去りかけると、ネビルはその手首をつかんだ。
「僕たちは全員、戦い続けるよ、ハリー。わかってるね」
「ああ、僕は――」
胸が詰まり、言葉が途切れた。ハリーにはその先が言えなかった。ネビルは、それが変だとは思わなかったらしい。ハリーの肩を軽く叩たたいてそばを離れ、また遺体いたいを探しに去っていった。
ハリーは「マント」を被かぶり直し、歩きはじめた。そこからあまり遠くないところで、誰かが動いているのが見えた。地面に突っ伏す影のそばに屈かがみ込んでいる。すぐそばまで近づいて初めて、ハリーはそれがジニーだと気づいた。
ハリーは足を止めた。ジニーは、弱々しく母親を呼んでいる女の子のそばに屈んでいた。
「大丈夫よ」ジニーはそう言っていた。「大丈夫だから。あなたをお城の中に運ぶわ」
「でも、わたし、お家に帰りたい」女の子が囁ささやいた。「もう戦うのはいや」
「わかっているわ」ジニーの声がかすれた。「きっと大丈夫だからね」
ハリーの肌はだを、ざわざわと冷たい震えが走った。闇やみに向かって大声で叫さけびたかった。ここにいることをジニーに知ってほしかった。これからどこに行こうとしているのかを、ジニーに知ってほしかった。引き止めてほしい、無理やり連れ戻してほしい、家に送り返してほしい……。
しかし、ハリーはもう家に戻っている。ホグワーツは、ハリーにとって初めての、最高にすばらしい家庭かていだった。ハリー、ヴォルデモートそしてスネイプと、身寄りのない少年たちにとっては、ここが家だった……。