「スニッチに隠されていた物は――」
ハリーは語りかけた。
「森で落としてしまいました。その場所ははっきりとは覚えていません。でも、もう探しに行くつもりもありません。それでいいでしょうか」
「ハリーよ、それでよいとも」
ダンブルドアが言った。ほかの肖しょう像ぞう画がはわけがわからず、何のことやらと興味を引かれた顔だった。
「賢けん明めいで勇気ある決断じゃ。きみなら当然そうするじゃろうと思っておった。誰かほかに、落ちた場所を知っておるか」
「誰も知りません」
ハリーが答えると、ダンブルドアは満足げにうなずいた。
「でも、イグノタスの贈り物は持っているつもりです」
ハリーが言うと、ダンブルドアはにっこりした。
「もちろんハリー、きみが子孫に譲ゆずるまで、それは永久にきみのものじゃ」
「それから、これがあります」
ハリーがニワトコの杖つえを掲かかげると、ロンとハーマイオニーが恭うやうやしく杖を見上げた。ぼんやりした寝不足の頭でも、ハリーはそんな表情は見たくないと感じた。
「僕は、ほしくありません」ハリーが言った。
「なんだって」ロンが大声を上げた。「気は確かか」
「強力な杖だということは知っています」
ハリーはうんざりしたように言った。
「でも、僕は、自分の杖のほうが気に入っていた。だから……」
ハリーは首に掛かけた巾着きんちゃくを探り、二つに折れて、ごく細い不ふ死し鳥ちょうの尾お羽ば根ねだけで辛かろうじてつながっている柊ひいらぎの杖を取り出した。ハーマイオニーは、これだけひどく壊こわれた杖は、もう直らないと言った。ハリーには、もしこれでもだめなら、もう望みはないということだけがわかっていた。
ハリーは折れた杖を校長の机に置き、ニワトコの杖の先せん端たんで触ふれながら唱となえた。
「レパロ 直れ」
ハリーの杖が再びくっつき、先端から赤い火花が飛び散った。ハリーは成功したことを知った。ハリーが柊と不死鳥の杖を取り上げると、突然、指が温かくなるのを感じた。まるで杖と手が、再会を喜び合っているかのようだった。