日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 喬林知 » 正文

今日からマ王2-6

时间: 2018-04-29    进入日语论坛
核心提示:          6 おれの中ではその間ずっと、ポーリュシカポーレが流れていた。 それも幼稚園《ようちえん》の運動会用
(单词翻译:双击或拖选)
           6
 
 おれの中ではその間ずっと、ポーリュシカポーレが流れていた。
 それも幼稚園《ようちえん》の運動会用ではなく、ロシアのごついおっさんが、ウォッカ片手に唄《うた》いあげる、名付けてゴーリキーパーク合唱団バージョンだ。
 そんなコーラス集団はいないだろうけど。
 夢と現《うつ》つの境目あたりで、身体《からだ》は心地《ここち》よく暖かかった。降り注ぐ日光が当たっていて、まぶたの裏まで真っ白い闇《やみ》だ。
 やがて陽光も翳《かげ》ってゆき、再び夜が訪《おとず》れる頃《ころ》、おれはようやく目を覚まし、コンラッドの胸から頬《ほお》を離《はな》した。
「……ロシア民謡《みんよう》が……」
「なんですか、東西冷戦問題ですか?」
「違《ちが》う、それはもう、終わったよ」
 十五年前に合衆国を出ちゃった次男は、へえ本当にと感心している。戸口に立っていた三男|坊《ぼう》は、バスローブ姿のままだった。
 綺麗《きれい》な眉《まゆ》を大げさにひそめてみせる。
「うなされたぞ」
「誰が? おれが?」
「違う、ぼくがだ」
「ヴォルフラム、何をそんな怒《おこ》って……ああ、またおれなんか凄《すご》いことやっちゃったの?」
「やっちゃったって、覚えていないのか!? あれを、まったく!?」
 ヴォルフラムは戸に寄り掛《か》かってずるずると座《すわ》り込み、首を晒《さら》してのけ反《ぞ》った。
「幸せ者」
「ええっ!? おっ覚えてないほうが幸せっていうほど酷《ひど》いことやっちゃったの、おれ!? てゆーか、ここどこ!? わたしは誰、じゃなくて……」
 特別室とは雲泥《うんでい》の差の、三|畳程《じょうほど》の薄暗《うすぐら》い小部屋《こべや》だった。この規則的な揺《ゆ》れは、海上だ。三等船室だって二段ベッドくらいはあるだろうに、この部屋には家具類が何ひとつなかった。窓には格子《こうし》がはめられて、床《ゆか》も壁《かべ》も剥出《むきだ》しの木のままだ。
「なんで鉄格子……おれなにやって、どれくらい寝《ね》てた? 確かセーラー服に説教かまして、誰かが海へ落ちそうに……ベアトリス、ベアトリスだよ! どうなった!?」
 おれはコンラッドの服を掴《つか》み、彼が夜会|衣装《いしょう》なのに気がついた。所々にある赤茶の乾《かわ》いた染《し》みは、斬《き》り合いの激しさをものがたっている。
「ひとつずつ順に答えますよ。まず、ベアトリスは元気だし両親と一緒《いっしょ》です。あなたは彼女を助けた後に、この世のものとは思えない強力で恐《おそ》ろしい術を披露《ひろう》し、海賊《かいぞく》どもを懲《こ》らしめました。俺《おれ》が思うにこの船はヒルドヤード船籍《せんせき》なので、仕入れていた食肉の大半が、うちの国の輸出した飼料からカルシウムを摂取《せっしゅ》してたんじゃないですかね。だから結果としてああいうことに」
 ……どういうことに?
「で、陛下《へいか》のおかげでほとんど鎮圧《ちんあつ》されたところへ、シマロンの巡視船が駆《か》け付け、賊を全員、拘束《こうそく》しました。あなたはそのまま寝込んでしまって、もうすぐ二日がたとうとしている。窓《まど》の外の紫《むらさき》が紺《こん》に変わると、また新しい夜が訪れ、恐ろしい体験を酒の肴《さかな》にパーティーが始まるというわけです。ひとつお願いがあるんですけど」
 おれの頬《ほお》をつまんで軽くひっぱる。
「コンタクトは外してから眠《ねむ》ってくれ」
 保育士になれそうなスマイル0円。
「けど、どうしておれたちは閉じ込められてんの? あー、えーと自分で言うのもなんだけどさあ、おれは皆《みな》さんを助けたわけだろ? そりゃちょっと怖《こわ》がらせたのかもしんねーけど、おれがいなけりゃ巡視船だかも間に合わずに、海賊に逃《に》げられてたかもしんないよね」
 人身売買の「商品」を乗せて。含《ふく》む、おれとヴォルフラム。
「そればかりじゃない。護衛船も大きなダメージだったし、この船の救命|艇《てい》は全《すべ》て壊《こわ》されていました。おそらく去りぎわに火を放って、船ごと沈《しず》める計画だったろうね。皆殺しだ」
 含む、コンラッド。
 まるで他人《ひと》ごとのように淡々《たんたん》と説明する。自分だって殺されてたかもしれないのに、どうしてそんなに平静でいられるんだろう。
 いやそれよりも、せっかく大惨事《だいさんじ》を防いだのに、何故《なぜ》おれたちがこんな目に遭《あ》っているのだろうか。
「ばれたからですよ、魔族《まぞく》だと」
 コンラッドは、慣れた様子で肩《かた》をすくめた。
「シマロン領は俺達魔族にとって、旅を楽しめる地域じゃないんです」
「そんなばかな」
 そんな理不尽《りふじん》な話ってアリか!?
 小市民的で規模の小さい正義感だけど、おれはどうにかして助けようとしたんだ。魔族だからとか人間だからとか関係なしに、みんなを助けようとしたはずなのに。
 やっぱり余計なことだったのだろうか。
「……ごめん……」
「なにがです?」
「軽はずみなことしちゃって」
 おれは体育|座《ずわ》りで膝《ひざ》を抱《かか》え、コンラッドの肩にこめかみを押《お》しつけた。
「おれが爆発《ばくはつ》を我慢《がまん》できてりゃ、今頃《いまごろ》はディナーテーブルでメインディッシュだ」
 両脚を投げ出し、おれに喉《のど》を向けた無防備な姿勢で、ヴォルフラムが言った。
「ユーリが謝《あやま》ることはない」
「ヴォルフ……」
「愚《おろ》かなのは人間どもだ」
 目尻《めじり》に触《ふ》れているコンラッドの身体《からだ》が、困惑《こんわく》を示してわずかに揺れた。彼の父親は人間で、彼自身にも人間の血が流れている。だいたい魔王なんて持ち上げられているおれだって、人間と何ら変わりがない。
 この話はここまでで終わりにしよう。どうしてこんなことになったのかより、この先どうするかのほうがずっと重要だ。
 おれは、四角く切り取られた薄紫《うすむらさき》の雲と空を存分に眺《なが》めた。
「今日の日暮れは縦縞《たてじま》だよ。窓から外は見えるのに、決して行けない不自由さ!」
「お前、魔王だというのなら、何か飛べるものに姿を変えてあそこから脱出《だっしゅつ》してみせろ」
「無茶言うなよー、バットマンじゃねーんだからさぁ」
 あの人だって、変身はしない。
「バットマン! 俺それ知ってますよ。全身黒ずくめで、胸に黄色で蝶《ちょう》が描《か》いてあるやつ」
「……それじゃバタフライマンじゃん」
「二人でぼくの知らないことを話すな!」
 おれの寝起《ねお》きの腹が、山鳩《やまばと》のような呻《うめ》きを発した。一日半飲まず食わずでいれば、胃腸も苦情を訴《うった》える。
「豪華《ごうか》ディナーは無理だとしてもさ、とりあえず脳味噌《のうみそ》に燃料やんないと、今後の計画も立てられないよ」
「ちゃッらーんッ!」
 こん平師匠《ぺいししょう》の掛け声で勢いよく扉《とびら》が開かれて、寄り掛かっていたヴォルフラムが弾《はじ》かれた。そこにはオレンジの髪《かみ》を緩《ゆる》くまとめ、大きな銀の盆《ぼん》を捧《ささ》げ持った、笑顔《えがお》の男が立っていた。
「お待たせ、豪華夕メシよんっ」
 皿からの湯気と食欲をそそる匂《にお》いが、部屋の隅々《すみずみ》まで広がった。
 最初おれは男を見張りと思い込み、ふざけた人選をしたものだとあきれた。
 だが彼はすぐそばまで近付いて、おれの脇に盆を置き跪《ひざまず》く。
「お目覚めのようですな陛下。大事にいたらず何よりです。さ、これは他《ほか》の客と寸分|違《たが》わぬ献立《こんだて》ですが、陛下のお口にあいますかどうか……」
「ななななんでおれのこと陛下なんて呼ぶの!? 確かに魔族だってのはバレちゃったけど、おれ平凡《へいぼん》な旅の魔族で、もっと正確にいうと身体は人間で……」
 奴《やつ》はしなやかな上半身を起こし、ロジャーラビットが跳《は》ねるみたいな笑い方で、おれの両肩をどついてきた。
「いーねぇ! ほんとだ、聞いてたとおりだ。素《す》だと相当かわいいねーェ」
 コンラッドの口元は、複雑だがリラックスした緩《ゆる》み具合だ。敵対勢力ではないらしい。
「おい、陛下に失礼だろう」
「だぁねェー。けどそりゃ国内なら無礼だけど、ここは遠い海の上、オレのこと忘れてるつれない男を、ちょっとくらい困らせてもいいんじゃねぇかぁ?」
「忘れてる、ということは、おれはどっかでアナタにお会いしてるわけですか?」
 やや吊《つ》り気味の切れ長の目は、現在はいたずらっぽく笑っている。だがそれは簡単なスイッチで、どんなに冷酷《れいこく》にもなれそうなブルーだ。
「……すいません、お顔に覚えが……」
「これといって特徴《とくちょう》もない顔だしね」
 古いジャズレコードで聞けそうな嗄《しゃが》れ声。太く安定した首と、肩から背中への絶妙《ぜつみょう》な曲線、服の上からでも断言できる惚《ほ》れ惚《ぼ》れするような外野手体形。
「あっ、みっ、ミス・上腕《じょうわん》二頭筋!?」
「ご名答ーぅ」
「えっ、あれっ、でもなんで男性になっちゃったんですか!?」
「変なこと仰《おっしゃ》いますな、オレは元から男だよ。女装《じょそう》は仕事、仕事上の都合」
 男性だと教えられてから聞けば、ハスキーな声も魅力的《みりょくてき》だ。理想的外野手体形も、ミスター・上腕二頭筋なら納得《なっとく》がいく。
「じゃあなんでコンラッドにナンパされてたんだよ」
「オレが隊長になんだって? 仲がいいってこと? そーりゃ当然ですよ、ガキの頃《ころ》から一緒《いっしょ》なんだから」
 ガキの頃から!? 待てよ、ということは、また新たなファミリー出現なのか!? グウェンとコンラッドとヴォルフが兄弟で、こいつとコンラッドの父親が同じだったりすると……。
「違《ちが》いますよ、兄弟じゃありません」
 次男本人が早めに否定してくれた。
「てっとり早くいうと、幼なじみです。二人とも片親が人間だったので、子供の頃、同じ場所で育ったんです。成長してからは同じ隊に所属し、戦友として生死を共にしたわけ。彼の名前はグリエ・ヨザック。非常時に俺達を支援《しえん》するようにと、シルドクラウトからずっとついてた護衛です」
「よろしこー」
 陽気でふざけたボディーガードは、耳の横でひらひら手を振《ふ》った。
「無礼な奴だけど腕《うで》は立つんで、旅の間だけ目をつぶってください」
「ホントいうと乗船する前に、国内で裸《はだか》の付き合いしてんだけどね」
「裸の……あっもしかして、ニューハーフ風呂《ぶろ》にいた!? じゃああの時おれの、こっ、こっ」
「息子《むすこ》さん? 拝《おが》ませていただきやしたよーォ」
「ぎゃああああああ」
「なんだと!? ユーリ、ぼくに内緒《ないしょ》で子供なんか生んだのか!?」
「生むかボケっ!」
 ヨザック、与作《よさく》、武器は斧《おの》。
 車のCMのメロディーで歌ってみたが、見られたショックは拭《ぬぐ》えない。
「……とにかく、冷める前にこれを腹に詰《つ》め込んでしまおう。陛下、いきなり普通《ふつう》の食事して大丈夫《だいじょうぶ》ですか? もっとこう、病人食から試《ため》したほうが」
「いや、食う、食いますとも!」
 愚《おろ》かにも意地汚《いじぎたな》くおれは言った。自分の内蔵を過信していたのだ。
「いいねえ、そうこなくっちゃいけねぇや。こいつは厨房長《ちゅうぼうちょう》がお前さんたちの行為《こうい》を意気に感じて、こそっと持たせてくれたんだぜ。普段《ふだん》、何気なく捨てちまってる物で、あんな芸術見せてもらったのぁ初めてだって」
「へえ、芸術だってさ。コンラッド、リサイクル品でなんか作ったの?」
 兄弟の視線はおれに注がれている。
「……おれ?」
「まあ気にしなさんな」
 ヨザックが、含《ふく》み笑いで胡座《あぐら》をかいた。食卓《しょくたく》がないから盆《ぼん》を床《ゆか》に置き、アジアご飯っぽく車座で食べた。
 子羊の骨つき肉ハーブソース添《ぞ》えには、誰《だれ》一人手をつけようとしなかった。
 おいしそうなのに、何故《なぜ》だろう。
 
 
 
 夜明け前にヨザックが戻《もど》ってきて、脱出《だっしゅつ》するからと起こされた。
 おれたちは身を寄せ合って眠《ねむ》っていて、おれはキャリアウーマンと女子高生に足を絡《から》められる夢をみていた。現実はどうだったのか考えたくない。
「こっからは救命|艇《てい》で手漕《てこ》ぎでも、本船より先に上陸できるだろ。海の真ん中で逃《に》げ出したって、漂流《ひょうりゅう》すんのが精々《せいぜい》だもんな。さ、陛下も隊長も起きてくれ。閣下《かっか》はまだまだおねむらしーけどな」
 美女と美少年には低血圧が似合う。可愛《かわい》らしく目を擦《こす》ったヴォルフラムは、粗末《そまつ》な毛布を手繰《たぐ》り寄せた。
「ヴォルフラム、二度寝は遅刻《ちこく》の元だぞ。一限の数学、寝ていいから」
 おれもどこかがズレてるようだ。
「荷物が半分しか取り戻せなくてよォ。要《い》るもんが揃《そろ》ってりゃいいんだが」
「船はどうしたんだ? この船の救命艇は、海賊どもに壊《こわ》されていただろう」
「おう、直させといた。そいつが見張りも誤魔化《ごまか》して、うまく脱出させてくれるって手筈《てはず》よ」
 ヨザックは抱《かか》えてきた袋から、三人分の服と薄黄色いゴム風船を取り出した。自分もひとつに口をつけ、息を吹《ふ》き込んで膨《ふく》らませる。
「ぼーっと見てないで、早く脱いでそれ着て、これ膨らまして」
「なにそれ」
「水難救助訓練用人形、救命くん」
 溺《おぼ》れ役のエキスパートか。
「こいつに、ふーっ、服着せて、ふーっ、ここに残してけば、ふーっ、あんたたちがこいつに化けたってんで、ふーっ、相手は魔族だ何をしてくるか判《わか》らんぞって、この救命くんを幽閉《ゆうへい》したりするわけよ、ひゃはは、考えるだけで楽しーねェ」
「……そういうことするから、魔族に関してでたらめな噂《うわさ》ばっか流れてるんじゃねーの?」
「まあ確かに、時間|稼《かせ》ぐ身代わりは必要ですよ陛下」
 言い包《くる》められてるような気がする。
 おれたちはボートデッキまで忍者走《にんじゃばし》りで行き、準備|万端《ばんたん》で繋《つな》がれていた救命艇に乗り込んだ。ニヤリと笑って葉巻をくわえ、親指を突き出して送ってくれたのは、そばかすの見習いくん、リック……ではなく、彼を殴《なぐ》っていた船員だった。金銭で動くのは確認《かくにん》済みだ。
「大丈夫かな、あいつすぐチクったりしないかな」
 斜《なな》め横でオールを握《にぎ》りながら、コンラッドは遠くなる客船に視線を向ける。
「金を受け取る者には、二通りあります。小銭で動いて裏切る者と、大金でしか動かず裏切らない者と。あいつは金には汚いけれど、貰《もら》ったからには裏切りませんよ」
「なるほど。あ、じゃあ大金を貰っといて裏切るパターンは?」
「それは金銭じゃなくて、損得で動いてるんでしょう」
「あんたら喋《しゃべ》ってねーでどんどん漕げ! 本船に追い付かれちゃ元も子もねーだろ!?」
 わずかにボートが曲がっている。隣《となり》でヴォルフラムが居眠《いねむ》りしていた。
「わーっヴォルフ、寝るな! 回る、回っちまうー」
「はへ」
「はへじゃなーい! 漕げっ、漕げってほら、引いてェ戻す、引いてェ戻す、ヒーヒーフー、ヒーヒーフー」
「……陛下それ、ラマーズ法なんじゃないかなぁ……」
 どうしてそんなこと知ってるんだろう。おれ以前に、コンラッドさんが。
 四人の逃亡者《とうぼうしゃ》は白み始めた夜明けの海を、揺《ゆ》れる島の灯《ひ》めざして必死で漕いだ。
 さようなら、最初で最後の豪華《ごうか》客船の旅。思い残すことはあまりない。
 櫂《かい》の雫《しずく》が頬《ほお》に跳《は》ね、舐《な》めると塩が舌にしみた。
 今はまだ、ヴァン・ダー・ヴィーアは静まり返っている。祭りが始まれば賑《にぎ》わうのだろう。
 あの島に眞魔国の宝が眠《ねむ》っている。最凶《さいきょう》最悪の……いや、悪と決め付けてはいけない。魔王にしか持てないという最強の最終兵器。おれはそいつを取りにきたんだ。
 海賊に襲《おそ》われに来たわけじゃないんだぜ。
「よーし、待ってろよ、魔剣《まけん》メルギブ!」
「モルギフ」
 あっという間に訂正《ていせい》された。
 小さく遠ざかる帆船《はんせん》を尻目《しりめ》に、おれたちは陸へと近付いてゆく。
 おれは日本語で、コンラッドは聞きかじりの英語で、なんとなくマイケルさんの歌を口ずさんでいた。ご一緒に。
「はーれーるーや」
 ついつい神を讃《たた》えちゃう魔王ってのも、珍しい。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%