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今日からマ王3-8

时间: 2018-04-29    进入日语论坛
核心提示:     8 灯《あか》りの漏《も》れている店といえば、酒場か娼館《しょうかん》くらいだった。 ユーリが|眞魔《しんま》
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      8
 灯《あか》りの漏《も》れている店といえば、酒場か娼館《しょうかん》くらいだった。
 ユーリが|眞魔《しんま》国に喚《よ》ばれるようになって、今でこそ王都に落ち着いたコンラッドだが、それまでの満たされない十数年間には、異国を旅する機会も多かった。
 スヴェレラの首都は規模こそ大きいが、夜間は活気を失っている。酒場には酔《よ》いどれた兵士がしこたま居るのだが、娼館に若い女の姿はない。皆《みな》が皆、女房殿《にょうぼうどの》への貞節《ていせつ》を誓《ちか》い、健全な恋愛《れんあい》しか求めないのだろうか。
「気分が悪い」
 |黙《だま》って横を歩いていたヴォルフラムが、久々にぼそっと呟《つぶや》いた。
「この街には法力に従う要素が満ちている。しかも法術士の数も多い」
「俺には|魔力《まりょく》の欠片《かけら》もないから、そういうことは判らないけど。辛《つら》ければ宿で……」
 無闇《むやみ》に歩き回っても、収穫《しゅうかく》があるとは限らない。
「うるさい」
 憎《にく》まれ口をきく気力があれば、いきなりぶっ倒れたりはしないだろう。次男は弟の強情《ごうじょう》さに|溜息《ためいき》をつき、帰れと言うのを|諦《あきら》めた。
 数年前に法石が|発掘《はっくつ》されてから、この国の気候はおかしくなった。乾燥《かんそう》地帯に位置するとはいえ、雨期には|充分《じゅうぶん》な降雨があったのに、それがほとんど見込めなくなったのだ。作物や家畜《かちく》は生き延びられなくなり、食糧《しょくりょう》の自給率は最低となった。その代わりに希少価値である法石は、世界的な市場で取り引きされた。上質の物はかなりの高値がつき、逆に質の劣《おと》る物は国内に安価で流れた。屑《くず》同然の規格外品なら、法力を持たない者までバザールで買えるという。
 もっとも石で儲《もう》けているのは一部の富裕《ふゆう》層だけで、民《たみ》の多くは雨不足に乾《かわ》いて飢《う》えていた。|飢餓《きが》による不幸な犠牲《ざせい》を出さずに済んでいるのは、家族のいずれかが働き手として、採掘場の労働に従事しているからだろう。
 本当に質のいい法石は、女子供の手でしか掘《ほ》れないと言われている。
 淑女《しゅくじょ》のいない娼館の前を過ぎてから、コンラッドは異父弟の様子を窺《うかが》い見た。
「そんなに法力に従う要素が多い街で、グウェンダルは力を使えるだろうか」
「魔術や魔力に頼《たよ》らなくても、兄上は充分に立派な武人だ。だが、正直なところこれだけ魔族に不利な土地で、魔術を自在に操《あやつ》れるのは、母上と……」
 エメラルドグリーンの瞳《ひとみ》が曇《くも》り、整った眉が顰《ひそ》められた。ヴォルフラムは、らしくなく逡巡《しゅんじゅん》する。
「……スザナ・ジュリアくらいしか、思いつかない」
「そりゃ大変だ」
 特に気にするふうもなく、コンラッドは二階建ての角を曲がった。表通りを一歩|離《はな》れて路地に入ると、たちまち光が少なくなる。ボストンやデュッセルドルフの街角みたいに、心強い街灯はどこにもない。店や家のランプが消えてしまうと、頼りは月と星ばかりだ。
「他の隊の誰《だれ》か一人でも、陛下と|接触《せっしょく》できればいいんだが」
「首都で合流と言ったんだから、ぼくらを待っていないはずがない。宿屋に泊《と》まっていなかったのは、例によってユーリの我が|儘《まま》だろう。あいつは旅を娯楽《ごらく》か何かと勘違《かんちが》いしている」
 それはお前だよヴォルフラム。次男はなんとか笑いを堪《こら》えた。
 ちょうど娼館の裏手に来たとき、地下室に通じる石階段から小柄《こがら》な影《かげ》が走り出てきた。避《よ》ける間もなくこちらにぶつかる。子供よりはいくらかしっかりしているが、少年と呼んでもおかしくないような体つきだ。
「あっごめんなさ……」
「ユーリ?」
 違う名前を口にしそうになって、コンラッドは自分でも驚《おどろ》いた。|記憶《きおく》の彼方《かなた》の姿とは、声も背格好も……。
「似てないぞ。何を勘違いしてるんだ」
 ヴォルフラムが不満げな声をあげた。
「ユーリはもっと品があって洗練されている。それにこれは、棒みたいだとはいえ女だぞ?」
「待って! 待ってあなたたち、ユーリを知ってるの!?」
 少女は頭部を覆《おお》っていた布を落とし、月の光に目を凝《こ》らして相手を見た。ウェラー|卿《きょう》とフォンビーレフェルト卿を交互《こうご》に比べ、最後に|金髪《きんぱつ》の美少年で目を止めた。
「あなた魔族の人ね。だってすごく|綺麗《きれい》な顔してるもの。ねえあなたがた、ユーリの知り合いなの?」
「知っているも何も……」
 コンラッドが言い淀《よど》んでいるうちに、ヴォルフラムは不|愉快《ゆかい》そうに鼻を鳴らし、得意のふんぞり返りポーズで少女を眺《なが》めた。
「ユーリはぼくの婚約者《こんやくしゃ》だ」
「えっ」
 いけないことを聞いてしまった顔をして、女の子は唇に指を当てる。十六、七歳くらいだろうか。長く濃《こ》い|睫毛《まつげ》の下の大きな目が、隠《かく》し事をできずに動いてしまう。
「……ということは、それじゃ、あの、あのっあなたが、あのォ」
「なんだ」
「婚約者をお兄様に奪《うば》われたという弟さんなのね?」
「なにィ!?」
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 月と星の仄《ほの》かな光でも判るほど、ヴォルフラムの頬《ほお》が猛《もう》スピードで紅潮した。脳天から湯気でもたちそうだ。やはり先の街での情報をワクチン代わりに伝えておくべきだったか。
「どういうことだ!? どういうことだコンラート!? 兄上がそんな、まさか、いややっぱり、というかあの尻軽《しりがる》ッ!」
「落ち着けヴォルフ。ちょっとした誤解だから」
「あの、いえ、誤解じゃないわ。あたし二人に直接会ったんだもの。気の毒に、あのひとたち追われていたの。お互《たが》いに|手錠《てじょう》で繋《つな》がれて離れられないのよ」
「手錠だとぉ!?」
 頭で湯が沸《わ》かせそう。目玉焼きなら堅《かた》めに焼けそうだ。それにしてもこの娘《むすめ》は天然なのだろうか。事態をどんどん悪くしてゆく才能がある。
「でもどうかもう責めないであげて。二人はお似合いの偽名《ぎめい》まで名乗って、末永く幸せになりたそうだったもの」
 ペアルックならぬペア偽名とは。
「……その場しのぎとかなんじゃ……」
「そんなことないわ! だってユーリとあの人、あの、あたし名前を教えてもらってないの。ヒューブの|従兄弟《いとこ》の背の高い方は、とっても息が合ってたもの。ああ、でももう二人のことは許してあげて。そしてどうにか助けてあげて。あたしが力になれれば良かったんだけど、一人で抜《ぬ》け出すのがやっとで。若い女がたくさん居るところに紛《まぎ》れ込めば、目立たずに時間を稼げるかと思って、こうして娼館に来たんだけど……信じられないわ! 女の人がいないの! いるのは綺麗なおにーちゃんたちばっかりよ。この国の行く末が心配っ」
 もはや娼館というよりゲイバーだな。
 婚約者様は怒《いか》りのあまり我を忘れ、ゴミ箱に八つ当たりを繰《く》り返している。しばらく蹴らせておくことにして、コンラッドは泣きそうな少女の肩《かた》に手を置いた。
「ではきみは、陛……ユーリ達の居場所を知ってるんだね?」
「少なくとも何処《どこ》に連れて行かれるかは、判るわ。あたしもそうなるところだったから。正式に別れると誓《ちか》えなかった場合……」
 サイズの合っていない服に掌《てのひら》を擦《こす》りつける。
「寄場《よせば》送りにされてしまう」
 
 
 重くて大きな荷物を投げる音で、|聴覚《ちょうかく》から意識が戻《もど》り始めた。腕《うで》も足も自分のものではないようで、動かそうにも力が入らない。投げ出された荷物はおれ自身だと、気付くまでにかなりの時間を要した。
 頭上からは間延びした口調の会話が聞こえる。
「けどなーこいつどう見ても女にゃー見えねーだろー? 男をここに入れといても、何の役に立つんだかなー。男は法石を掘れねーだろー?」
「気にすんな、いいんだよ。オレたちゃ言われたとおりにしてりゃーよ。でかい方の奴《やつ》を|監獄《かんごく》送りにしたんだから、こっちのちっこい方は女の寄場に置いとくしかねーだろ?」
 もう二人一緒《いっしょ》ではないということだ。白モヒカンは約束どおり手錠を外してくれたが、|状況《じょうきょう》はますます悪化している。グウェンダルは刑務所《けいむしょ》送りだし、おれは手足も自由にならない。
「それにな、首都じゃ最近はそーいうのもありなんだってよ」
「げー、世も末だなー」
「ああ、世も末だなー」
 そーいうのって、何よ!?
 遠ざかる声に追い縋《すが》って問い詰《つ》めたかったが、身体《からだ》のほうはやっと指先が動く程度だ。扉《とびら》が乱暴に閉められて、外から|閂《かんぬき》をかける音がした。背骨が床《ゆか》にぶつかって、ようやく痛覚が戻ってきたのが判った。口を開ける、息を吐《は》く、声を出してみる、痙攣《けいれん》する|瞼《まぶた》を押し上げてみる。
「……あ……いた、た」
 途端《とたん》にいくつもの足音が、木の床を蹴って駆《か》け寄ってきた。これだけの数の人間が、今までどこに潜《ひそ》んでいたのだろう。薄《うす》い膜《まく》がかかってぼんやりとした視界には、一つだけの小さな天窓から、明けかけた薄紫《うすむらさき》の空が見える。それをいきなり遮《きえざ》って、覗《のぞ》き込んでくる顔、顔、顔。
「可哀想《かわいそう》に、何か薬を打たれたんだね。あら、ほんとに男の子だ」
「ほんとだ、若ーい。お肌《はだ》もほっべもツルツル……じゃ、ない」
 うーん期待外れで申し訳ない。おれ屋外スポーツのヒトなもんで。
 女性達にどこもかしこも触《さわ》られて、嬉《うれ》しいような恥《は》ずかしいような。
「でもさ、寄場預かりにされたってことは、この子も……」
「あんたたち、もうすぐ夜が明けるんだよ! 少しでもその子を休ませてやらなきゃ」
 年長者らしき凜《りん》とした声が、集団の後ろからかけられた。
 彼女が手近な寝台《しんだい》を指すと、素早くそこが整えられた。四人くらいの女性を呼んで、おれを横たえるように言ってくれる。ろくに顔は見えないが、てきぱきと人を動かす様子からすると、どうやら凜々《りり》しい声の持ち主は、この小屋のリーダーらしかった。
 ベッドというよりも寝棚《ねだな》だった。板に薄い布団《ふとん》が敷《し》いてあり、駅のベンチ同様に快適だ。
「あのー、夜分に申し訳ございませんが、ここはどういった施設《しせつ》なのでしょうか?」
 |恐《おそ》らく年上のご婦人なので、可能な限りの敬語で|訊《き》いてみた。
「ここは神や国に背《そむ》いた女達が、何もかもを奪われてゴミみたいに捨てられる場所だよ。あたしたちみたいな咎人《とがにん》でも、法術士様のお使いになる、法石を掘る役には立つんだってさ」
 言い慣れた皮肉を盛り込むが、すぐに世話好きそうな口調に戻る。
「あんたこそどうして、男の子がこんなとこに?」
「ちょっと駆け落ちしたと勘違《かんちが》いされちゃって」
「駆け落ち者なのかい? じゃああそこで寝てるマルタと一緒だ」
 彼女が顔を向けた隣《となり》のベッドには、薄明かりにくすんだ|金髪《きんぱつ》の女が、身体を丸めて眠《ねむ》っていた。こちらに向けた背には、|粗末《そまつ》な布の下に背骨が浮いて見えた。
「あの娘《こ》は|女房《にょうぼう》持ちの雇《やと》い主と恋仲《こいなか》になってね。隣国《りんごく》へ逃《に》げようと図《はか》ったんだけど、待ち合わせ場所に現れたのは恋人じゃなかった。相手の男は怖《お》じ気《け》づいたんだ」
 マルタは胎児《たいじ》みたいに膝《ひざ》を抱《かか》えたまま、会話が聞こえても動かない。リーダーらしき女性は吐息《といき》混じりに言った。時代劇でよくある牢《ろう》名主《なぬし》にしては、彼女自身も若そうだった。
「そいつは恐らく、今でも街でゆうゆうと暮らしてるよ。マルタは生まれたばかりの子供まで取り上げられて、口もきけなくなっちまったのに」
「え、だって二人で計画したんだから、二人とも罰《ばつ》を受けるのが当然じゃないの」
「違うよ。たぶらかした女が悪いんだってさ。男は、自分は|騙《だま》された、こんな女とはきっぱり別れるって誓いさえすれば、それで無罪|放免《ほうめん》だ。あんたの相手は監獄に送られたって?」
「らしーっス」
「じゃあ最後まであんたと縁《えん》を切るって言わなかったんだ。羨《うらや》ましいね、愛されてて」
 思わず鳥肌《とりはだ》が立ってしまった。断じてそういうことではない。
 徐々《じょじょ》に明るくなってきて、室内の様子が判ってきた。二段ベッドが左右の壁《かべ》に五台ずつあり、あとは細い通路だけだ。若き日のポール・ニューマンが「暴力脱獄」で脱走《だっそう》した刑務所並みに、|狭《せま》くて陰鬱《いんうつ》で殺風景だった。
 おれと話している奥さんは、手も足も驚《おどろ》くほど痩《や》せていて、指の関節が突《つ》き出していた。もしかしたら本当はもっと若いのかもしれないが、苦労のせいか三十以上に見える。特に美人というタイプではないが、意志が強く信頼《しんらい》できそうな目をしていた。牢名主を張っているだけのことはある。
 外で起床《きしょう》ラッパが鳴り|響《ひび》き、寝ていたルームメイト達が|一斉《いっせい》に起き上がった。もの凄《すご》いスピードで作業着を身につけてゆく。恥ずかしがってる|暇《ひま》もない。深夜のバラエティー番組なら、お着替《きが》え選手権で一万円は稼げてる。呆気《あっけ》にとられて見ていると、牢名主さんが靴紐《くつひも》を結びながら訊いてきた。
「あんた名前は?」
「えーとどっちだっけ、確か|中華《ちゅうか》っぽいやつ。ああマーボー! マーボーでした」
「あたしはノリカだよ。さ、マーボー、合図があったらすぐに看守が来るから、それまでに身《み》支度《じたく》を整えないと朝食が貰《もら》えないよ」
 ずいぶん痩せた藤原紀香《ふじわらのりか》だななどと、頭の隅《すみ》っこで不|謹慎《きんしん》なことを思いつつ、おれはどうにか身体を起こした。ダブルヘッダーを消化した翌日みたいに、節々が悲鳴をあげている。ストレッチ、ストレッチしないと故障の原因になるから……。
「起床!」
 本物のアメリカの刑務所さながらに、腰《こし》に警棒を下げた看守がドアを開けた。まだ立ち上がれないおれを見て、連帯責任、とだけ叫《さけ》んで出ていった。
 小屋の中が怒りと|溜息《ためいき》に満ちる。どうやら朝食抜き決定らしい。
「なにこれ、もしかしておれのせい?」
 おれ一人のせいで、二十人が朝飯抜き!?
「うわーどうしようッ、すんませんっ、申し訳ない!」
「仕方ないよ知らなかったんだから。初日は誰《だれ》でもそんなもんさ」
 ノリカねーさんは弱く笑って慰《なぐさ》めてくれるが、朝食抜きが体に悪いのは厚生労働省も認めている事実だ。エネルギーなしでは脳味噌《のうみそ》も働かない。次の点呼には間に合わせなくてはと、痛む筋肉に力を加える。
「そもそもどうして女性の宿舎に入れられてるんだろう」
「当たり前だよ、ここには女しかいないんだから」
「ああそっか、駆け落ちとか不倫《ふりん》とか、愛の罪人の女性達ばかりの更生《こうせい》施設だったっけ」
 ところが、更生施設などではなかった。
 眠《ねむ》っている間に連れてこられたので外の様子は全く知らなかったのだが、何処までも続く乾《かわ》いた大地で、目に入るものといえば岩山と砂と数本の枯《か》れ木だけだった。規模の小さいエアーズロックだ。小屋は他にも六棟《とう》あり、住人は総勢百人以上。
 剥《む》き出しの岩肌《いわはだ》には数ヵ所の穴が空けられ、一列になった女達は次々とそこに入っていった。
 誰一人口もきかず、整然と。皆《みな》、痩せて汚《よご》れて疲《つか》れていたが、列は絶対に乱れない。腰を鎖《くさり》で繋《つな》がれているからだ。
 またしても、鎖。
 早くも太陽は輝《かがや》きを強め、たちまち|汗《あせ》が滲《にじ》みだす。穴の構造は解らないが、快適であるはずがなかった。
 更生施設なんかじゃない。これは強制労働で、ここは収容所か刑務所だ。
 決められた相手以外と恋をした、ただそれだけのことなのに、彼女達はまるで囚人扱《しゅうじんあつか》いだ。いや囚人だってもっと待遇《たいぐう》はいい。
 どうなっているんだろう、この国は。おれはどうしてこんな所にいるんだろう。
 穴には入るなと止められて、おれは四、五人しかいない男性|受刑《じゅけい》者《しゃ》と、日射《ひざ》しの中で荷袋《にぶくろ》を担《かつ》がされた。女性|陣《じん》は山程の斑《まだら》の石と、時折金ぴかの小石を掘《ほ》り出して、荷車で穴の外に運んでくる。外の作業場では比較的高齢《ひかくてきこうれい》のご婦人方が、収穫《しゅうかく》を選別しては麻袋《あさぶくろ》に詰めていた。さらに厳重に包装したものを、おれたちが倉庫に運ぶことになる。
 採掘《さいくつ》されているのは法術士が使う法石で、上質なものになると女子供の手でしか触《さわ》れないらしい。どこかのセクハラ課長みたいだ。おれの胸にある魔石《ませき》と同様の貴重品だが、精製しないとただの石。
 他の男どもは例外なく髭面《ひげづら》のおっさんだ。彼等が何故《なぜ》、女子刑務所にいるのかを想像したら、三夜連続でうなされずには済むまい。
 看守は棒、時にはシャベルやツルハシで、躊躇《ちゅうちょ》なく囚人を打ち据《す》えた。いくつもの荷袋を担ぐうちに、この悲惨《ひさん》で非現実的な光景が、夢ではないかと思えてきた。
 だってそうだろう、考えられる? 二十一世紀の日本から、埼玉から、夏休み真《ま》っ只中《ただなか》のシーワールドから、強制労働の一日体験だなんて。一日だけでは終わらないかもしれない。この先ずっと、エアーズロックのお膝元《ひざもと》で、クソ重い荷物を担ぎ続けるのかもしれない。ルームメイトの何人かが言っていたとおり、一生ここから出られないのかも。
 それともこれはやっぱり夢で、かけっぱなしの扇風機《せんぷうき》から弱風を浴びて、フローリングの床《ゆか》で昼寝《ひるね》中なのか。胸にはわんこが乗っていて、そのせいで悪夢を見ているとか。
 ぶっても蹴《け》っても抓《つね》っても、夢は一向に終わらなかった。
 心の片隅《かたすみ》の卑怯《ひきょう》な部分では、この一瞬《いっしゅん》だけを耐《た》え抜《ぬ》けば、誰かが助けに来てくれると信じていた。自分自身では何一つできなくとも、あと少し、あと一往復だけ|頑張《がんば》れば、コンラッドが姿を現すのではないかと、つまずくたびに目を凝《こ》らした。とりあえずおれはあと何日かは生き延びられるけど、|監獄《かんごく》とやらに送られたグウェンダルは明日をも知れぬ状態なんだ、そう思い出したのはずいぶん後だ。身勝手さに耳が熱くなる。
 いいよ、先にそっちに行ってくれ。
 先に実の兄を救出してくれ。
 おれはまだ、あと一週間は粘《ねば》れそう。プロ球団の地獄《じごく》のキャンプ体験中だと思えば、辛《つら》い|基礎《きそ》トレも|我慢《がまん》できる。
「くそ……でも、いらない、筋肉が、ついちゃいそう、だなっ」
 私を野球につれてって、と、せめてリズムと鼻歌だけでも繰《く》り返しながら、肩《かた》に食い込む石の袋を宿舎よりも立派な倉庫に運ぶ。
 風呂《ふろ》と朝飯と水さえあれば、もう少し元気でいられたろうに。
 |僅《わず》かな水分を与《あた》えられるだけの昼|休憩《きゅうけい》を過ぎて、一日で最も日射しがきつくなった頃《ころ》、おれは看守にシャツを掴《つか》まれ、事務所とおぼしき小屋前に連れて行かれた。
「毛色の違《ちが》う新参者がいると聞いていたが、それか?」
 ウッドデッキでロッキングチェアに揺《ゆ》られつつ、赤っぽい液体入りのグラスを傾《かたむ》けるという、憧《あこが》れのリゾート|満喫《まんきつ》姿でテラスから語りかけてきたのは、髪《かみ》と|眉《まゆ》と髭《ひげ》それぞれの色が違う珍妙《ちんみょう》な男だった。名付けてトリコロールさんか?
「そのとおりでございます、トグリコル様」
 ニアピン。
 男はミニサイズのジュニアを膝《ひざ》に乗せていた。六歳くらいだと思われるが、父親とは異なり髪と眉は|平凡《へいぼん》な茶色。もちろん髭はたくわえていない。
 暑さと空腹と|脱水《だっすい》状態で、やさぐれかけていたおれは、相手がお偉方《えらがた》の一人である可能性も忘れて、ぶっきらぼうに呟《つぶや》いた。
「だれそれ」
 膝にしがみついていたトリコロールジュニアが、ミュージカル子役調で歌ってくる。
「おとーさまは偉いんだよ、おとーさまはこの場所から、世界一の法石を掘り出すんだよ」
「……ああそう。じゃあテメーで穴に入って掘ってきやがれ」
 女達のうち外に出ていた十数人が、射るような視線でこちらを見ていた。またしても反抗《はんこう》的な態度をとって、連帯責任にされるのを恐《おそ》れているのだろう。トグリコルは赤すぎる髭をしごき、息子に向かって問いかける。
「ネロ、あれで遊びたいか?」
「遊びたーい!」
 返事の最後を言い終わる前に子供は階段を駆《か》け下りて、おれの腰にタックルをかましていた。
 小学一年生のオフェンスなのに、踏《ふ》みとどまれず無様に倒《たお》れ込む。我々を見守っていた全員が、自分の仕事に戻《もど》り始めた。夕飯まで差し止めくらわないうちにと、おれも荷置き場に向かいかけるが、トリコロールジュニアが足にぶら下がり、歩きにくいったらありゃしない。
「遊ぶんだよー遊ぶんだよー遊ぶんだよー」
「あーあー。おにーさんの晩飯を保証してくれるっつーならね」
「そんなの家で食べればいいよ。うちの料理人のご飯おいしーよ」
「……お抱《かか》えシェフがいるってわけだ」
 予想以上に子供の腕《うで》は力強かった。路地で転ばされ泣いていたジルタを思い出す。背丈《せたけ》はそんなに変わらないのに、肩や首の太さはどうだろう。生まれた先の環境《かんきょう》が違うだけで、こんなにも差がついてしまうのか。ネロは同情を誘《さそ》う涙目《なみだめ》で、腰に抱《だ》きついて見上げてくる。
「……判ったよ、遊ぶよ」
 父親が刑務所《けいむしょ》の所長なら、咎《とが》められることもないだろう。
「何して遊ぶ? そうだな、初心に返ってキャッチボールなんかどう?」
「馬!」
 咄嗟《とっさ》に周囲を見回すが、馬の姿はどこにもない。
「じゃあこの広ーい砂地に、絵でも描くかあ。しょーがねえや、おれ美術2だけどね」
「馬!」
「……はいはい、じゃあ馬ね。馬うまっと……キリンにならないように……うわっ」
 小石を拾って屈《かが》み込んだおれの背に、問答無用で乗ってきた。体格のいい六歳児の重量で、背骨が悲鳴をあげている。
「馬って、おれか? おれが馬なの!? ちょっと待った、それはどうかな、人間としての尊厳的にもどうかなぁっ」
「走れー!」
 尻《しり》を叩《たた》いて|ご機嫌《きげん》だ。就学前の幼児には、人権問題も通用しない。走れユーリ、ユーリは走った。やむを得ず。走るというより膝で歩いた。これだってどこかの筋肉を鍛《きた》える効果があるだろうと、自分自身に言い聞かせながら。
 なんとも惨《みじ》めなパトラッシュだ。
 作業場から二百メートル程離《はな》れると、ちょうどいい高さの岩陰《いわかげ》で、異様な光景に出くわした。
 看守の一人が|小脇《こわき》に包みを抱え、もう一人は砂混じりの土にシャベルを突《つ》き立てている。バスケットボール大の土饅頭《どまんじゅう》が、無数にある。
「なんだろう、タイムカプセルでも埋《う》めんのかな」
「違うよ」
 ネロはどうでもいいことのように、おれの背中でさらりと口にした。
「だってあそこ墓だもん。きっとまた赤《あか》ん坊《ぼう》を埋めるんだよ」
「……なんだって?」
「だからー、赤ん坊を埋めるの。そのための墓なのー。大きいお山の下には大人の死体も埋まってるけどね」
 墓標もなければ花もない。
 おれが興味を示したので、トリコロールジュニアは得意げに、背から下りて説明し始める。
 ミュージカルでベッドから飛び降りる、アニーの友人その一みたいに。
「ほんとは墓もいらないような女ばっかなんだけど、おとーさまは偉くてじひぶかいから、死んだら埋めてやるんだよ」
 親の言葉をそのまま鵜呑《うの》みにしているのだろう。
「けどなんで、こんな場所に赤ん坊が……」
「だって女が産むんだもん」
 いい加減、張り倒したくなっていたが、爪《つめ》が食い込むほど両手を|握《にぎ》って我慢した。この場合悪いのは子供じゃない。そんなことを教えた父親だ。
「男をたぶ……た、ぶ、か、ら、し、た、悪い女が、ここに連れてこられてから産んだ子供が、どうせ要らない子供だから、すぐに死んじゃうんだって」
「それ、母親にも言ってみな」
 権力者の息子は|虚《きょ》を突かれ、笑顔のままで聞き返す。
「なにを? 今のを、おかーさまに?」
「そうだ。母親もそのとおりだって言ったら、料理人にも言ってみな。料理人もそうだって言ったら、先生にも言ってみな。誰《だれ》も間違《まちが》ってると教えてくれないなら」
 馬が何を言い出すのかと、子供は口も挟《はさ》めず聞いている。
「おれが教えてやるよ。その考えは間違ってる。悪い女なんて語るのは、せめて初恋《はつこい》で大|失恋《しつれん》してからにしろ」
 おれの場合、初めて好きになったのは、超美脚《ちょうびきゃく》を惜《お》しげもなく曝《さら》した派手な感じの女性だった。日本人なのに緩《ゆる》く波打つブロンドだ。いたいけな幼稚園児《ようちえんじ》だったおれは、ストーカーよろしく尾行《びこう》したのだが、入っていったのは銭湯の男湯だった。ニューハーフ相手に大失恋。
 話をしている間にも、看守は掘《ほ》りにくそうにシャベルを使って、ちょうどラグビーボールが入るくらいの大きさの穴を掘り上げた。脇《わき》に抱えた包みを地面に下ろす。薄汚《うすよご》れた布でくるまれた、不格好な塊《かたまり》が。
「……あれ」
 かすかに動いたように見えてしまった。
 女達の叫《さけ》び声が聞こえてくる。顔を向けると作業場から駆け出した一団が、墓地へと走ってくるところだった。おれの部屋の牢《ろう》名主《なぬし》ノリカねーさんと、ルームメイト様ご一行だ。腰《こし》を鎖《くさり》で繋《つな》がれているので、単独行動は不可能だ。全員が|一斉《いっせい》に向かってくるということは、連座制を覚悟《かくご》の上でのことだろう。
 彼女達は声を張り上げて、二人の看守を止めている。
「ちょっと待って! その赤ん坊はマルタの子だろう? 四日前に産んですぐ取り上げられたんだ。多分まだその子は生きてるって、実の母親が言ってるんだよ」
「こっちだって生きてりゃ埋めやしねーよ。泣きもしないし動きもしない、死んだから墓に入れてやろうってんじゃねえか」
 追いかけてきた別の看守達が、六人がかりで|女囚《じょしゅう》の鎖を引っ張ろうとする。騒《さわ》ぐ女の一人が金切り声をあげ、相手を振《ふ》り切って墓へと駆け寄ろうとする。
「こいつッ!」
 施設《しせつ》の支配者であるトリコロールが何人ものお供を引き連れて、散歩みたいなのどかな足取りでやって来た。警棒やシャベルで打ち据《す》えられている入所者を、髭をしごきながら眺《なが》めている。
「あの猿《さる》は何を叫んでいるんだ?」
 何だと? こめかみが短く引きつるが、おれにしては驚異《きょうい》的な自制心で即座《そくざ》に気持ちを落ち着かせた。新参者が下手に頭を突っ込んで、いっそう複雑にしてもまずい。媚《こ》びへつらった作り笑いで、腰の低いお供が答えている。
「自分の赤子はまだ生きているから、返せと申しておりますので」
「生きている? ふん」
 短気で得をしたことはない。ついでにいうと持って生まれた小市民的正義感でも、いい目を見たことなど一度としてなかった。どうにかして冷静さを保ち、この場をうまいことやり過ごすんだ。だって、ここにはコンラッドもギュンターも、おれの味方は誰一人としていない。グウェンダルやヴォルフラムはそれぞれ我が身の危機だろう。
 だがトグリコルの次の言葉は、両手を握って唇《くちびる》を噛《か》むおれの理性を、軽く吹《ふ》き飛ばしてくれやがった。
「生きていようが死んでいようが同じことだろう」
 ブルース・ウィリスの髪《かみ》がまだ豊かだった頃《ころ》、彼は一人きりでテロリストと対決していた。
 金曜の九時にテレビをつけっぱなしで、ミカンの筋を馬鹿《ばか》丁寧《ていねい》に取っていたおれに、親父《おやじ》はしみじみとこう言った。
「やっぱり独りじゃ、難しいよなあ」
 敵は圧倒《あっとう》的多数、近くに味方は誰もいない。たった一人で何が出来る? 返り討《う》ちに遭《あ》うのが関の山だ。
 でも。
「ちょっと待てよ、お前等……」
 一人きりで抵抗《ていこう》するのは難しい。でも、困難と不可能の間には、少なくとも一歩は差がついている。
「……生きてると死んでるは同じじゃないぞ。それにもう亡《な》くなった子供だとしても、死者に対する敬意ってもんが必要だろ? 母親の前できちんとお経《きょう》をあげて、お別れさせてやるのが筋ってもんだろ。ちょちょいと穴掘って終わりだなんて立派な所長のすることじゃないよ!」
「この新参者は何だ? 説教師か?」
「よさんかキサマ、営倉送りだぞ!」
 薄《うす》ら笑いを消した腰巾着《こしぎんちゃく》が、|大慌《おおあわ》てで黙《だま》らせようと飛びかかってくる。腰を曲げて奴等《やつら》の腕《うで》から逃《のが》れ、トグリコルの正面へと詰《つ》め寄った。
「いーや、よさないね、言わせてもらうね! そもそもアンタ、不適切な関係に陥《おちい》ったからって、女性だけが一方的に悪いってどーいうこと!? 恋愛もエッチも相手があってするもんなんだからさ、喧嘩《けんか》両成敗じゃねーけど、お咎《とが》めも半々でいいはずだろっ。なのに何だよこれ、こんな過酷《かこく》な収容所だかに、まるで重罪犯した囚人みたいに、女の人だけ閉じこめられるってどういうこと!?」
 ここまできたら、もうどうにも止まらない。トルコ行進曲は佳境《かきょう》で鍵盤《けんばん》連打状態だ。
「男女平等は職場だけの話じゃないんだぜ!? 人生においてあらゆるところで平等なの! その上もっと重要な基本的人権てヤツがあって、査察が入ったらあんたの首なんて五十回飛んでも収まらないぞ!?」
 トグリコルは横目でおれを見ただけで、すぐに視線を騒動《そうどう》の中央に戻《もど》してしまった。
 |砂埃《すなぼこり》の|舞《ま》い上がる乾《かわ》いた地面では、新たに加勢した女達が泣き叫び、それ以上の数の看守が凶器を振るっていた。茶色い髪を振り乱《みだ》し、背の低い女が金切り声をあげて腕を伸《の》ばす。服を掴《つか》まれては無惨《むざん》に転び、また立ち上がっては進もうとする。
「生きてるの! 生きてるの! 判るんだよあたしには! あたしの子供だから」
 喋《しゃべ》れなくなったはずのマルタだった。
 同僚《どうりょう》が暴徒を抑《おさ》えている間にさっさと仕事を済ませてしまおうと、最初の看守が包みを持ち上げ、縦に深い墓穴に投げ込もうとする。
「あ」
 錯覚《さっかく》かどうかを確認《かくにん》するより先に、おれの両足はスタートを切っていた。
 動いた。
 ほんの|僅《わず》かで、風の悪戯《いたずら》かもしれないが、突《つ》き出た赤黒い何かがぴくりと身動《みじろ》いだ。
「待っ……」
 宙に放たれた白茶の塊は、破れた布がなびく残像を見せつけて、スローモーションで落ちてゆく。穴は計算したかのような大きさで、新しい主を飲み込もうと待ち受けている。
 おれは|精一杯《せいいっぱい》両腕を伸ばす。布から目を離《はな》さない。砂が肘《ひじ》と二の腕を容赦《ようしゃ》なく焦《こ》がすが、基本に忠実なヘッドスライディング。
 辛《かろ》うじて指先が包みに届く。一気に引き寄せて抱《かか》え込む。
「……動いたんだ」
 確かに動いたんだ。しかも薄い繊維《せんい》越《ご》しに、微《かす》かな温《ぬく》もりが伝わってくる。
「あったかいよ、まだ。まだ死んでないんじゃねーのか!? この子まだ生きて……」
 言葉にできない感情に震《ふる》える指先で、外側の布を外しかける。女達は息を呑《の》み、動くことも忘れていた。マルタだけが涙《なみだ》と掠《かす》れ声で祈《いの》っている。
 正座をした膝《ひざ》の上には、生温かく軟《やわ》らかい物体が乗っている。最後に絡《から》まった一枚を、恐《おそ》る恐る捲《めく》り取った。
 |衝撃《しょうげき》と絶望と困惑《こんわく》で、思考能力が一瞬《いっしゅん》途切《とぎ》れる。
「……何をした?」
 赤《あか》ん坊《ぼう》は微かに息をしていた。赤黒く皺《しわ》の寄った薄い胸が、僅かながらも規則的に上下していた。両眼も口も閉じたままで、皮膚《ひふ》はすっかり乾いている。|握《にぎ》った両手も動くことはなく、左腕だけが腹の脇にくっついていた。右腕と右足は、|奇妙《きみょう》な方向に曲がっている。
「この子に何をしたんだ? なんてこと、なんてことを……」
 泣き声もない。
 男達から逃れた母親が、おれの腕から息子を取り戻した。円の中に追い込まれた女達に、卑劣《ひれつ》な凶器が振り下ろされる。
 なんてことを。
 胸にある魔石が熱を放ち、吸い込む酸素が揺《ゆ》らめいた。|頭蓋《ずがい》の奥のどこかから、微《び》電流がシナプシスを駆《か》け抜《ぬ》ける。
 脊柱《せきちゅう》を這《は》い上がる衝撃が、鼓動《こどう》と重なって|聴覚《ちょうかく》を苦しめた。その重低音と耳鳴りの高音が、耐《た》え難《がた》い激しさでせめぎ合う。
「……女や子供ばかり……こんな目にあわせて……」
 黄色ばかりの視界のはずが、真っ白な煙《けむり》が弾《はじ》け広がる。
 スポーツ・ハイにも近いような、絶頂感と恍惚感《こうこつかん》。
 脳細胞《のうさいぼう》のたった一つが、この上なく美しい人の名を|記憶《きおく》している。
 あなたを……。
 あなたって、誰《だれ》?
 その先は、わからない。
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