さっそく大工が腐った板をはぎとって見ると、なんとその下に、体を釘に打たれたヤモリがいて、くるくるくるくると、まわっていたのです。
「やれやれ。背中から腹まで、釘を打たれておるわい」
「これでは、まわるばかりで逃げられん」
大工たちが騒いでいるところへ、家の主人も出てきて、
「ははあ。これはきっと五年前、この家をなおしたとき、釘を打たれたものにちがいない」
と、言いました。
すると大工たちは、
「へーえ、それにしても、五年もの長い間、どうして生きておったものかのう」
と、不思議がりました。
そこで大工が調べてみると、近くの壁にヤモリが行き来した道らしい、一すじのあとがついていたのです。
「そうか。この道を通って、五年もの間、仲間が食べ物を運んでいたというわけか」
「なるほど」
「こんなヤモリでも、情というものはあるんじゃな」
「ヤモリよ、お前もよい仲間を持ったものだ」
みんなは仲間を助けたヤモリたちに感心し、釘に打たれたヤモリを助けてやったという事です。