年寄りのむかし語りによると、煮ものの甘味に、柿の皮の干したものを用いていた時代には、掌《て》クボに一摘みの塩をもらうことが、こどもたちにとって、なによりのおだちんだったそうです。それが幸か不幸か日清戦争で日本が勝利をおさめ、台湾が日本の領土となると、白砂糖が大量に生産され、庶民の間にも砂糖が調味料として使われるようになり、こどもたちのおだちんも、塩にかわって一摘みの砂糖が用いられるようになりました。こうして砂糖の甘味がごちそうの主役の座を占めるようになり、徐々に日本人の味覚を毒し、堕落させて行きました。砂糖の害については、すでに江戸時代、こころある儒者・医師などによって指摘されています。
また、今日、砂糖が虫歯(カルシウム不足)の原因になることは、周知のことですが、そのカルシウム分不足が酸性体質の要因になること、そのために、あらゆる病気にかかりやすくなること、大脳の抑制機能を低下させ、精神の自制力を低下させること、蓄膿症やアデノイド、鼻カタル、肥厚性鼻炎のような「頭の働きをにぶくする」病気の原因になり、こどもの性格をいじけさせるもとになること——などについては、まだよく知らない人が多いようです。
いったい、砂糖には、なぜそのような害があるのか、砂糖と生理、砂糖と栄養ということについて、簡単に触れてみましょう。私たちが食べものから炭水化物を摂《と》る場合、これが体内に消化吸収されるには、いったん、糖に分解してからのことですが、砂糖の場合は、すぐに水にとけて腸の上部で短時間のうちに吸収され、血液の中にはいります。血液にはいった糖分は、燃焼して炭酸ガスと水に分解し、その際、エネルギーを出します。
砂糖は一〇〇グラム当たり三八四カロリー(米飯一四五、パン二七〇、うどん一一六カロリー)もあり、単位面積の耕地から穫れる農作物の中では、もっともカロリーの高いものですが、残念ながら糖分のほかになんの栄養素もありません。糖分が代謝し、分解するためには、同時にビタミンB1やB2が必要なのですが、これがふくまれていないので、栄養的には非常にかたよっていることになります。特にB1が不足すると、焦性ブドウ酸から疲労物質といわれる乳酸などができて、血液中に溜り、疲れ・だるさの感じを与えます。
砂糖を摂り過ぎるとB1が不足し、胃腸管の蠕動《ぜんどう》運動が鈍くなって、一方では食欲不振をきたし、他方では消化不良を起こします。
こどもは元来甘いものが好きです。しかし、必要以上に甘いものを与えたり、ごはん前にお菓子を食べさせたりすると、さまざまな糖害を起こしたり、胃液の分泌を抑えて、食欲不振を招き、ひいては若死の原因ともなります。こうした弊害を少なくするためには、砂糖の摂取量をできるだけ抑える(一日二〇〜二五グラム程度)一方、アルカリ性食品(野菜・くだもの・牛乳)や、ビタミン・カルシウム類を同時に摂ることが必要で、他の栄養分とのバランスを計ることが、糖害から身を守る方法だと言えましょう。
また、今日、砂糖が虫歯(カルシウム不足)の原因になることは、周知のことですが、そのカルシウム分不足が酸性体質の要因になること、そのために、あらゆる病気にかかりやすくなること、大脳の抑制機能を低下させ、精神の自制力を低下させること、蓄膿症やアデノイド、鼻カタル、肥厚性鼻炎のような「頭の働きをにぶくする」病気の原因になり、こどもの性格をいじけさせるもとになること——などについては、まだよく知らない人が多いようです。
いったい、砂糖には、なぜそのような害があるのか、砂糖と生理、砂糖と栄養ということについて、簡単に触れてみましょう。私たちが食べものから炭水化物を摂《と》る場合、これが体内に消化吸収されるには、いったん、糖に分解してからのことですが、砂糖の場合は、すぐに水にとけて腸の上部で短時間のうちに吸収され、血液の中にはいります。血液にはいった糖分は、燃焼して炭酸ガスと水に分解し、その際、エネルギーを出します。
砂糖は一〇〇グラム当たり三八四カロリー(米飯一四五、パン二七〇、うどん一一六カロリー)もあり、単位面積の耕地から穫れる農作物の中では、もっともカロリーの高いものですが、残念ながら糖分のほかになんの栄養素もありません。糖分が代謝し、分解するためには、同時にビタミンB1やB2が必要なのですが、これがふくまれていないので、栄養的には非常にかたよっていることになります。特にB1が不足すると、焦性ブドウ酸から疲労物質といわれる乳酸などができて、血液中に溜り、疲れ・だるさの感じを与えます。
砂糖を摂り過ぎるとB1が不足し、胃腸管の蠕動《ぜんどう》運動が鈍くなって、一方では食欲不振をきたし、他方では消化不良を起こします。
こどもは元来甘いものが好きです。しかし、必要以上に甘いものを与えたり、ごはん前にお菓子を食べさせたりすると、さまざまな糖害を起こしたり、胃液の分泌を抑えて、食欲不振を招き、ひいては若死の原因ともなります。こうした弊害を少なくするためには、砂糖の摂取量をできるだけ抑える(一日二〇〜二五グラム程度)一方、アルカリ性食品(野菜・くだもの・牛乳)や、ビタミン・カルシウム類を同時に摂ることが必要で、他の栄養分とのバランスを計ることが、糖害から身を守る方法だと言えましょう。