大根でもねぎでも、あるいは小松菜でも、畑から採《と》りたてのものは質がちがうかと思われるほどうまいものです。採ってから少しでも時間が経つと、味がグンと落ちます。まつたけにしても、採りに行ったその場所で、採れたてを時を移さず、すぐさま食べるのが、いちばんおいしいのです。京都あたりから日本各地へ送られるまつたけも、途中、籠の中で成長して、届いたときには、送り出したときより大きく育っています。生育に必要な栄養分を摂《と》らずに育つのですから味が落ちるに決まっています。したがって味もかなり変わってしまいます。
たけのこにしても産地から送り出すときには二〇センチのものが、届いたときには二二、三センチになっていたということが間々あります。これはたけのこが生きていたようでも、その実、死味に近づきつつある証拠です。生きた野菜でなければ、真の美味や持ち味は摂取できないわけです。魚や野菜の生きているか死んでいるかを見分けるには、魚では比較的たやすくわかっても、野菜ではそう簡単にわかりません。だから野菜は採りたてか、採りたてに近いほどよいのです。
このことわざは、京都で言われてきたもので、正しくは「三里四方の野菜を食べていれば、長寿延命疑いなし」というもので、鮮度の高いものこそ、栄養的だということを「三里四方の野菜」と端的に言い表わし、こうしたものを食べていれば、命長らえると説いています。近在、一二キロ四方以内で生産された野菜なら鮮度もよく、からだの調子を整えるために必要な無機塩類やビタミンなどを豊富に含み、これを摂っていれば「長寿延命」は保証つきと言えましょう。
交通輸送機関の発達していなかった以前には、野菜やくだものは、畑や木で十分|熟《う》れさせたものを採取して、近郊から消費都市へ運んだものですが、現在は生産地と消費地が遠く離れ、いわゆるレールものが大半を占め、野菜やくだものなどの生鮮食料品を完熟した状態で生産地から出荷すると、消費地に着くころにはほとんど腐ってしまいます。そのため、多くの野菜やくだものは、完熟以前に採取して、保存期間を少しでも長くできるようにしています。しかし、こうしたものは栄養的には価値が低く、味わいの点でも劣ります。以前にくらべ、野菜やくだものがまずくなったのは、単に化学肥料や質より量といった生産条件以外に、輸送の問題がからんで、未熟なものを食べさせられているからです。
野菜を新鮮な状態で、しかも完熟したものを消費者の手許に輸送する手段として、注目されているのがコールドチェーン方式ですが、これにはかなりの資金が必要で、まだ実験段階の域を出ていません。現状では八百屋さんが市場から仕入れてくる荷下《におろ》しの時間を見計らって買いに行き、少しでも鮮度のよいものを手に入れる努力が必要です。こうすれば、比較的採りたてに近いものが入手でき、栄養価も高く、おいしいものが食べられ、結果的には家計の一助ともなります。生きた野菜でなければ、真の美味も栄養も摂取できません。不精していては、おいしい料理はつくれない——と、肝に命じてください。
たけのこにしても産地から送り出すときには二〇センチのものが、届いたときには二二、三センチになっていたということが間々あります。これはたけのこが生きていたようでも、その実、死味に近づきつつある証拠です。生きた野菜でなければ、真の美味や持ち味は摂取できないわけです。魚や野菜の生きているか死んでいるかを見分けるには、魚では比較的たやすくわかっても、野菜ではそう簡単にわかりません。だから野菜は採りたてか、採りたてに近いほどよいのです。
このことわざは、京都で言われてきたもので、正しくは「三里四方の野菜を食べていれば、長寿延命疑いなし」というもので、鮮度の高いものこそ、栄養的だということを「三里四方の野菜」と端的に言い表わし、こうしたものを食べていれば、命長らえると説いています。近在、一二キロ四方以内で生産された野菜なら鮮度もよく、からだの調子を整えるために必要な無機塩類やビタミンなどを豊富に含み、これを摂っていれば「長寿延命」は保証つきと言えましょう。
交通輸送機関の発達していなかった以前には、野菜やくだものは、畑や木で十分|熟《う》れさせたものを採取して、近郊から消費都市へ運んだものですが、現在は生産地と消費地が遠く離れ、いわゆるレールものが大半を占め、野菜やくだものなどの生鮮食料品を完熟した状態で生産地から出荷すると、消費地に着くころにはほとんど腐ってしまいます。そのため、多くの野菜やくだものは、完熟以前に採取して、保存期間を少しでも長くできるようにしています。しかし、こうしたものは栄養的には価値が低く、味わいの点でも劣ります。以前にくらべ、野菜やくだものがまずくなったのは、単に化学肥料や質より量といった生産条件以外に、輸送の問題がからんで、未熟なものを食べさせられているからです。
野菜を新鮮な状態で、しかも完熟したものを消費者の手許に輸送する手段として、注目されているのがコールドチェーン方式ですが、これにはかなりの資金が必要で、まだ実験段階の域を出ていません。現状では八百屋さんが市場から仕入れてくる荷下《におろ》しの時間を見計らって買いに行き、少しでも鮮度のよいものを手に入れる努力が必要です。こうすれば、比較的採りたてに近いものが入手でき、栄養価も高く、おいしいものが食べられ、結果的には家計の一助ともなります。生きた野菜でなければ、真の美味も栄養も摂取できません。不精していては、おいしい料理はつくれない——と、肝に命じてください。