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八墓村-第四章 四番目の犠牲者(2)

时间: 2022-06-06    进入日语论坛
核心提示:ひょっとすると、美也子がそこらに出てやあしないか。そんなことを考えながら、野村家の裏へさしかかったとき、だしぬけに、「こ
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ひょっとすると、美也子がそこらに出てやあしないか。……そんなことを考えながら、野村家の裏へさしかかったとき、だしぬけに、

「これ、どこへ行く」

鋭い金切り声とともに、バラバラとわき道からとび出して、私のゆくてに立ちふさがったものがあった。濃茶の尼の妙蓮なのだ。私はギョッとして、足がその場にすくんでしまった。妙蓮は何やら大きな荷物を背負うていたが、私の姿をみると勝ちほこったように、体を反らせて、

「かえれ、かえれ、かえれ、おまえは東屋から一步も外へ出てはならぬ。おまえの行くさきざきに血の雨が降る。こんどはだれを殺しに行くのじゃ」

兎口からはみ出している、黄色い乱らん杭ぐい歯ばを見ていると、私の胸にはむらむらと、つめたい怒りがこみあげてきた。私は満身の憎悪を瞳にこめて、相手をにらみつけながら、足のそばをすりぬけようとした。しかし尼は大きな荷物をゆすぶりながら、私が右へよれば右、左へよれば左、と、悪いた戯ずら小僧が幼い子どもをいじめるように、通せん坊をする。

「やらぬ、やらぬ、一步もここを通さぬぞ。かえれ、かえれ、東屋へかえれ。そして、荷物をまとめてとっととこの村から出ていきおれ」

過労と寝不足のために、その日の私の精神状態は、ふだんの均衡をうしなっていたのだ。怒りが脳天からふきあげた。かっとして、私は、いきなり尼の体をつきとばした。そのひとつきで、尼の体は野村家の塀へいまでふっとんで、そこでどしんと尻しり餅もちをついた。がらがらと、背中の荷物が奇妙な音を立てた。

尼はびっくりして、兎口のくちびるをわなわなふるわせていたが、急にわあわあ泣き出した。

「人殺し……だれか来てえ……この男がわしを殺そうとした。だれか来てえ……」

尼の声をききつけて、野村家の裏木戸から、牛方らしい若者が五、六名バラバラととび出してきた。若者たちは私の顔を見ると、ギョッとしたように眼を見はったが、かれらの眼のなかに、ある無言の抗議をみると、私は心中しまったと思った。

「さあ、みんな、そいつをつかまえておくれ。そして駐在さんへ突き出しておくれ。そいつはわしを殺そうとしたんだ。ああ、痛い、痛い、そいつがわしを殺そうとした」

牛方たちは無言のまま、ずらりと私を取りまいた。何かいえば、躍りかからん気配である。私の腋わきの下から、タラタラとつめたい汗がながれた。私はそれほど、自分を臆病な人間とは思わぬけれど、理屈を説いてわからぬ相手だけに始末が悪いのだ。世の中に無知と無教養ほど恐ろしいものはない。

私はなにかいおうとしたが、舌がこわばって言葉が出なかった。男たちはまた一步、私のほうへ踏み出した。尼は相変わらず、わあわあと子どものように泣きながら、あることないことわめきたてる。私は進退きわまった感じだったが、そこへ野村家の裏口から、バラバラととび出してきたものがあった。

美也子であった。

美也子はその場の様子を見ると、とっさに事情をのみこんだのであろう。私のそばへ駆けよると、きっとうしろにかばいながら、

「まあ、どうしたの。みんなでこのひとをどうしようというの」

若者のひとりがもぐもぐ口を動かしたが、私にはよくききとれなかった。

美也子にもよくわからなかったとみえて、私のほうをふりかえると、

「辰弥さん、いったい、どうしたというんですの」

と、尋ねた。そこで私が手短かに事情を話すと、美也子は眉をひそめて、

「おおかたそんなことだろうと思ったわ。それじゃ尼さんのほうが悪いのじゃありませんか。さあ、みんなも話がわかったでしょう。わかったら、さっさとうちへかえって仕事をしなさい」

若者たちは顔を見合わせたが、しかたがないというふうに、首をすくめて裏木戸からなかへ入っていった。なかにはペロリと舌を出したものもあった。濃茶の尼も、味方がいなくなると、心細くなったのか、逃げるように立ち去った。わあわあと子どものように泣きながら。……

「ああ、びっくりした。いったい、あなたがなにをしでかしたのかと思ってギョッとしたわ」

美也子はほっとしたように笑いながら、

「あなた、いったい、どこへいらっしゃるの」

そこで手短かに梅幸尼の話をすると、美也子は眉をひそめて、

「まあ、話っていったいどんなことでしょう」

と、しばらく考えていたが、

「いいわ、それじゃあたしが慶勝院まで送っていってあげるわ。いいのよ、いいのよ、あたしは表で待っているから。……だって、いつなんどき、またいまみたいなことが起こるかしれませんもの」

私にもむろん、美也子のついてきてくれるのはありがたかった。

慶勝院は野村家から、一丁ほど行ったところにあり、それは尼寺というより、庵室といったほうがよさそうであった。柴しば垣がきのなかにあるのは、小ザッパリとした、ふつうのわらぶきの家で、門を入ると三間ほど行ったところに、腰の高い障子がはまった玄関があり、玄関のすぐ左に濡ぬれ縁えんのついた部屋がふたつ。雨戸はひらいていたが、ちかごろ貼はりかえたばかりらしい障子がいかにも清潔な感じでしまっていた。掃ききよめられた前庭には、楓かえでの樹がただ一本。

そのとき、私が不思議に思ったのは、障子のなかに電気がついていたことである。今日はよい天気だし、それほど暗い家とは思われないのに、どういうわけだろうと思いながら腰高障子をひらいて訪おとのうたが、なかから返事はきこえなかった。

二度三度、呼んだあげくに、私は玄関の土間へふみこんだが、そのとたん、頭から、つめたい水をぶっかけられたように、ゾッとしてその場に立ちすくんだ。

あがりがまちの障子があけはなってあったのだ。土間へ入ると、すぐにそこから奥の六畳が見通せた。梅幸尼はその六畳で、うつ伏せになって倒れていた。しかも、畳の上には点々として、黒いしみがこぼれ、尼の枕元には、田治見家からとどけられた会席膳がひっくりかえっていた。

私の膝頭ひざがしらはガクガクふるえた。のどがヒリヒリ、ヒリついて眼のまえがまっくらになったような気がした。

「おまえの行くさきざきに血の雨が降る」

さっき濃茶の尼の叫んだ言葉が、稲妻のひらめきのように、私の脳裏によみがえってきた。

そうだ、そのとおりだ。ここにもひとつ、殺人が行なわれている。……私が門を出ると、美也子がそばへよってきた。

「どうしたの。何かあったの。お顔の色が真っ青よ」

「梅幸さんが死んでいる」

それだけいうのがやっとであった。美也子はびっくりしたように大きく眼を見はって私の顔を見つめていたが、すぐ、踵きびすをかえして、バラバラと門のなかへ駆け込んだ。私もあとからついていった。

梅幸尼はやっぱり死んでいるのであった。そして、その死因が、祖父の丑松や、兄の久弥や、さては蓮光寺の洪禅さんと同じであるらしいことは、畳の上にこぼれた、血のあとでも想像された。梅幸尼のくちびるにも、黒く乾いた血がこびりついていた。

美也子と私は、茫然と眼を見交わしていたが、そのとき私は、一枚の紙片がひっくりかえったお膳のそばに落ちているのに気がついて、何気なく拾いあげた。

それはポケット日記を引きさいた紙の一枚で、そこには太い万年筆の字で、次のようなことが書いてあった。

双児杉 お梅様の杉

お竹様の杉

博 労 井川丑松

片岡吉蔵

分限者 東屋、田治見久弥

西屋、野村荘吉

坊 主 麻呂尾寺の長英

蓮光寺の洪禅

尼 濃茶の尼、妙蓮

姥ケ市の尼、梅幸

そして以上の名前のうちお竹様の杉、井川丑松、田治見久弥、蓮光寺の洪禅、姥ケ市の尼、梅幸の名前の上には、それぞれ、赤インキで棒がひいてあったのだ。

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