日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 横沟正史 » 八つ墓村 » 正文

八墓村-第四章 四番目の犠牲者(11)

时间: 2022-06-06    进入日语论坛
核心提示:典子の恋「ああ、典子さんですか。びっくりしましたよ」相手が典子だとわかったので、私はいくらかほっとした。相手が無邪気な典
(单词翻译:双击或拖选)

典子の恋

 

「ああ、典子さんですか。びっくりしましたよ」

相手が典子だとわかったので、私はいくらかほっとした。相手が無邪気な典子ならば、なんとかこの場の様子をいいくるめられそうな気がしたからである。

典子は、

「ふふふ」

と、口のうちで笑って、

「あたしこそびっくりしてよ。だって、だしぬけに、こんなところからとび出していらっしゃるんですもの。意地悪ね」

と、典子は珍しそうに滝の向こうをのぞきこみながら、

「どうしてこんなところに隠れていらしたの。この穴のなかに何かあって?」

典子は私が抜け孔の、向こうがわからやってきたとは気がつかぬらしい。ちょっとした気まぐれから、穴のなかへもぐりこんでいたのだろうと、思いこんでいるらしいのだ。むろん、私にとってはそのほうが好都合なので、できるだけ、彼女に調子をあわせることにした。

「いえ、なに、ちょっと入ってみたんですよ。なんにもありませんよ。ただじめじめした洞穴ですよ」

「そうね」

典子はすぐに洞穴をのぞくことをやめ、私の顔を仰ぎながら、瞳ひとみをかがやかせて、

「でも、どうしていまごろ、こんなところへいらしたの。何か御用がおありだったんですの」

「いや、別にそういうわけじゃなかったんですがね。なんだか気持ちがいらいらして、眠れなかったものですから夜風にあたったら気持ちがよかろうと、つい、ふらふらととび出してきたんです」

「そうお」

典子はちょっと失望したようにうなだれたが、すぐ、また快活に顔をあげると、

「でも、まあ、いいわ。お眼にかかれてうれしいわ」

私には典子の言葉の意味がよくわからなかった。びっくりして、星明かりのなかにほのじろく浮かんでいる典子の横顔を見守りながら、

「典子さん、それ、どういう意味?」

「ううん、なんでもないの。ねえ、うちへ寄ってらっしゃらない? おうち、いまだれもいないのよ、あたし、寂しくって寂しくって……」

「慎太郎さんはいないのですか」

「ええ」

「どこかへお出かけ?」

「さあ……あたしよく知らないのよ。このごろ毎晚、いまごろになると、どこかへ出かけるのよ。どこへ行くのか尋ねても、黙って教えてくれないの」

「典子さん」

「なあに」

「あなたはいまごろ、どうしてこんなところを步いてたの」

「あたし?」

典子は大きな眼をあけて、まじまじと私の顔をながめていたが、やがてふうっと下を向くと、右足で土を蹴けりながら、

「あたしねえ、寂しくて、寂しくてたまらなかったのよ。それで、いろんなことを考えてると、なんだか急に悲しくなって……とてもひとりでおうちにいられないような気がしてきたの。それで夢中でとび出して、そこらを步きまわっていたのよ」

「典子さんのおうちどこ?」

「そこよ、すぐ下に見えてるでしょう?」

私たちの立っているところは、坂の途中をきりひらいた狭い、幅二、三尺の険しい道で、うしろの崖がけの上もまえのゆるやかな傾斜も、いちめんに深い竹やぶでおおわれている。その竹やぶをすかして、斜め下のほうに小さいわらぶきの屋根と、白く灯の色のさした障子の上のほうだけが見えた。

「ねえ、寄ってらっしゃいよ、あたし、寂しくてたまらないんですもの」

典子は私の指を握ってはなさない。私はたいそう当惑したことだ。いかに典子がすすめても、彼女の家へ寄る気はなかったが、さりとて、そのまま洞穴のなかへもぐりこむこともできなかった。なんとかして、典子をこの場からつれ去らねばならぬ。

「おうちへ寄るのは困るのですが……では、どこかそこらで休んでいきましょう」

「あら、どうしておうちへ寄るの困るの?」

「慎太郎さんがかえってくるといけないから……」

「あら、どうして……?」

典子は無邪気な眼を見はって、私の顔をのぞきこむ。彼女には他人の思惑だの、世間のうわさなどということは、いっこう気にならないらしいのだ。いや、気にならぬというよりも、はじめから、そんなことは知らないのだ。典子は生まれたての赤ん坊のように、天てん真しん爛らん漫まんの女であった。

轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%

热门TAG: