日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 横沟正史 » 八つ墓村 » 正文

八墓村-第四章 四番目の犠牲者(12)

时间: 2022-06-06    进入日语论坛
核心提示:それでも彼女は、しいて自説を固持しようとはせず、やがてやぶのなかの小こ径みちをぬけると、ゆるやかな傾斜をしている草っ原を
(单词翻译:双击或拖选)

それでも彼女は、しいて自説を固持しようとはせず、やがてやぶのなかの小こ径みちをぬけると、ゆるやかな傾斜をしている草っ原をみつけて、そこで休んでいくことになった。草はじっとりと夜露にぬれていたが、そんなことにはお構いなしに、典子のほうからさきに腰をおろした。私もそのそばにならんで座った。

いま私たちのいるところは、八つ墓村を抱く丘の襞ひだのようになった窪くぼ地ちの縁へりで、その窪地のなかには階段式に狭い田んぼや畑があり、それらの田んぼや畑のあいだに、点々として、小さいわらぶきの農家が建っていた。ここらの農家は雨戸もしめず、電気もつけっぱなしで寝るとみえて、どの家の障子にも、明るく灯の色がさしており、その灯の色が、植えつけをおわったばかりの田んぼにうつって美しかった。空にはいっぱいの星屑くずで、銀河が乳色にけむっている。

典子はしばらくうっとりと、美しい星空をながめていたが、やがてその眼を私に向けると、

「お兄さま」

と、小さい声でいった。

「なあに」

「あたしねえ。さっきお兄さまのことを考えていたのよ」

私はびっくりして典子の顔を見直した。典子はしかし、べつに大して恥ずかしそうな色もなく、ただ、無邪気に、

「あたしねえ、もう、ほんとに寂しくて寂しくてたまらなかったのよ。なんだかこの世でひとりぼっちになったような気がして、しまいにはホロホロ泣けてきたの。ええ、泣けて泣けてしかたがなかったのよ。馬鹿ねえ、どうしてあんな気持ちになったのかしら、自分でもわからなかったんだけど……すると、ふいにどういうわけかお兄さまのことが思い出されてきたのよ。ええ、お兄さまにはじめてお眼にかかったときのことやなんか、いろいろと……すると、どうでしょう、急に胸が切なくなって、……ぎゅっと胸をしめつけられるような気がして……そして、いっそう泣けてくるのよ。それであたしたまらなくなったもんだから、さっきもお話ししたとおり、夢中でおうちをとび出したのよ。そして気ちがいみたいに步きまわっていたら、バッタリお兄さまに出会って……あたし、びっくりしたわ。心臓がドキドキしたわ。でも、とてもうれしくなって……ねえ、お兄さま。きっと神様が、あわれな典子のお願いをきいてくだすったのね」

典子の話をきいて私はかなり大きなショックを感じた。全身にビッショリ汗をかき、体じゅうが熱くなったり寒くなったりした。

ああ、これが愛情の告白でなくてなんであろうか。それでは典子は私を愛していたのか。

なにしろあまりだしぬけだったので、私はすっかり面めん食くらったかたちで、返す言葉もなく、ただまじまじと、典子の顔を見直していた。典子はしかし、別にはじらいの色もなく、まるで、グリムかアンデルセンのお伽噺とぎばなしに出てくる少女のように無邪気であった。少しもいやらしい感じではなく、むしろ反対に、素そ朴ぼくで可か憐れんであった。

しかし、それかといって、それに対して私はなんと答えることができようか。私の心のどこをさぐってみても、典子に対する愛情など微み塵じんもないのだ。いや、愛だの恋だのということは、もっとお互いに、理解しあって後のことではあるまいか。私はまだ典子という女性を、ほとんど知っていないのだ。

私はなんといってよいか返答に窮した。お座なりをいって相手を慰めることは、私の性質が許さなかったし、またこのような無邪気な女を欺くことは、許しがたい罪悪のように思われた。いきおい私はだまっているよりしかたがなかった。典子もまた、私の返事を期待していたわけでもないとみえて、自分のいうだけのことをいってしまうと、それで満足しているらしかった。そういう彼女の様子を見ると、自分がこれほど愛している以上相手も当然、愛してくれるものと、固く信じて疑わぬというふうにも見え、それがまた私を不安にした。

そこで私はできるだけ、この危険な話題から逃げ出さなければならなかったのだ。

「典子さん」

しばらくしてから、私のほうから呼びかけた。

「なあに」

「きみはこっちへ疎開してくるまで、東京でお兄さんといっしょに住んでいたんだろう」

「ええ、そうよ、どうして?」

「東京のおうちへ美也子さん、よくやってきた?」

「美也子さま? そうね、ときどき。たいていはお兄さんのほうから出かけていったのよ」

「美也子さんと慎太郎さんとは、結婚することになっていたんだって?」

「ええ、そんなうわさがあるわね。ひょっとするとお兄さんも、美也子さんもその気だったのかもしれないわ。もし、戦争があんなことにならなかったら……」

「美也子さんはいまでもときどき遊びにくる?」

「いいえ、ちかごろちっとも……そうね、はじめのうち二、三度いらしたけれど、お兄さんが逃げてるもんですから……」

「慎太郎さんが逃げてるんだって、どうしてだろう」

「どうしてだか知らないわ。ひょっとすると、美也子さんはお金持ちだのに、お兄さんは貧乏になったからかもしれないわ。お兄さんはあれでとても気位が高いのよ。ひとから哀れみをうけたり、お情けをかけられたりするの大きらいなのよ」

典子のこたえには少しも渋滞するところがなかった。おそらく彼女は、私がなぜこんな質問を切り出すのか、考えようともしなかったであろう。それを思うと、私はなんとなくうしろめたい感じだったが、しかしやっぱり突き止められるところまで突き止めておきたかったのだ。

「それじゃどうだろう、慎太郎さんさえ承知すれば、美也子さんはいまでも結婚するつもりかしら」

「さあ……」

典子は無邪気に首をかしげた。そうしてかしげているところをみると、びっくりするほど長い首だが、それは必ずしも悪いかたちではなく、反対に、どこかなまめかしいところさえあった。

「あたしにはわからないわ。あたし馬鹿だから、とてもひとの心なんかわからないわ。それに美也子さんは、あんな複雑な性格のかたなんですもの」

私は驚いて典子の顔を見直した。姉の春代も美也子に対して、よい感じを持っていないらしいことを、私は今日はじめて知ったのだが、典子もやっぱりそうかしら。人は見かけによらぬもの……姉の春代は美也子のことをそういったが、典子も同じようなことをいう。姉の場合は、一種の嫉しっ妬とみたいなものが、まじっていないとはいえないが、無邪気な典子に、そんな下心があろうとは思えない。してみると同性の眼から見た美也子はそんなかげのある女なのだろうか、私にはただ、お侠きゃんな、姐あね御ご気取りの女としか見えないのに。

轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%

热门TAG: