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八墓村-第七章 木こ霊だまの辻つじの恐怖(2)

时间: 2022-06-16    进入日语论坛
核心提示:搜索复制「でも、いいのよ。うれしいのよ。死ぬまえに辰弥さんに会うことができたのだから」「姉さん、死ぬなんていわないでくだ
(单词翻译:双击或拖选)

「でも、いいのよ。うれしいのよ。死ぬまえに辰弥さんに会うことができたのだから……」

「姉さん、死ぬなんていわないでください。それより相手はいったいだれなんです。だれがこんなことをしたんです」

姉の顔にはまたかすかな微笑がうかんだ。それはなぞのような微笑であった。

「だれだかわからないの、真っ暗だからわからなかったの。でも、わたし、そいつの左の小指をいやというほど噛かんでやったわ。もうちょっとで噛み切るくらい……辰弥さんあなたもさっきの悲鳴聞いたでしょう」

私は驚いて姉の顔を見直した。そういえばくちびるのはたに、なまなましい血がついている。それではさっきの悲鳴は姉ではなく、かえって犯人のほうだったのか。

姉はまた苦しげに体をのたくらせ、すすり泣くような息を吐いた。

「辰弥さん、辰弥さん」

「姉さん、姉さん、なんですか」

「わたしもうすぐ死ぬわ。わたしの死んでしまうまで、あなたはどこへも行かないでね。ここにいてわたしを抱いてね。わたし、あなたに抱かれて死ぬのうれしいのよ」

私は茫ぼう然ぜんとして姉の顔を見直した。ある驚くべき疑いがさっと私の頭をかすめた。

「姉さん、姉さん」

姉はしかし、私の言葉が耳に入ったのか入らないのか、うわごとのように言葉をつづける。

「辰弥さん、わたしもう死ぬのだから、どんな恥ずかしいことでもいえるわね。わたし、あなたがどんなに好きだったか……わたしはあなたが好きで、好きで……ああ、もう死ぬほど好きだった、それも弟としてではなく。ほんとはあなたは、わたしの弟ではないんだもの。それなのに、辰弥さん、あなたはわたしを姉としか扱ってくれなかったわね。それがわたしには悲しかった……」

ああ、姉はやっぱり知っていたのだ。私が真実の弟でないことを。そして、まちがって舞いこんできたこの私に、ひそかな思慕の情を寄せていたのだ。私はなんともいえぬ哀れさに、胸をうたれずにはいられなかった。

「でも、もういいわ。こうしてあなたに抱かれて死ぬのだから。ねえ、辰弥さん、わたしが死ぬまでどこへも行かないで、……そしてわたしが死んだら、かわいそうだと思ってときどき思い出してね」

姉はなおもくどくどと語りつづける。しまいには息切れがして、何をいってるのかわからなくなったが、それでもなおかつ、彼女は語りつづけた。もうとっくに視力をうしなった眼を見はりつづけて。……その顔は童女のように清らかであった。

こうして姉は、私に抱かれたまま息を引きとったのである。

私は姉の眼をつむらせ、静かに体を土の上に横たえてやったが、そのとき姉が左の手に、ふろしき包みと水筒を持っているのに気がついた。ふろしき包みをひらいてみると、竹の皮包みの握り飯が入っていた。それを見ると急に胸が迫ってきて、涙が滝のようにあふれた。ああ、姉は私のところへ弁当を持ってくる途中で、この奇禍に出会ったのだ。

姉の体を抱いて、しばらく私は涙にくれたが、すぐこうしている場合でないことに気がついた。一刻も早くこのことをお巡りさんに知らせねばならぬ。

姉の心尽くしの弁当を腰につけ、水筒を肩からかけると、私は懐中電燈を持って立ち上がった。が、そのときだった。

「この野郎!」

満身の憎悪をこめた声が、闇の中で炸さく裂れつしたと思うと発はつ矢し! と風を切って私の頭上に振りおろされたものがあった。実に危ない一瞬だった。うっかりその一撃をまともにくらっていたら、私の頭は柘ざく榴ろみたいにはじけていたにちがいない。

「何をする!」

反射的に身をしずめて、危うく最初の一撃をのがれた私はそう叫びながら、懐中電燈の光を、さっと襲撃者に浴びせたが、そのとたん、全身がしびれるような恐怖を感じた。

懐中電燈の光の中にうきあがったのは、まがうかたなき吉蔵の顔であった。最初の一撃に失敗したかれはギリギリと音を立てて、歯を噛みながら、まむしのような指で太い棍棒を握りなおしている。

その眼を見ると、さっき典子のいったことが、うそや誇張でないことがよくわかる。殺気がほとばしっていた。話せばわかる顔ではなかった。吉蔵はほんとうに私を殺すつもりなのだ。

まともに懐中電燈をむけられた吉蔵は、ちょっと眼のくらんだ様子だったが、やがて片手で光をよけながら片手で棍棒を大上段に振りかぶると、

「これでもくらえ!」

腹の底から憎悪のかたまりをしぼり出すような声だった。獣のように体を弾ませ、発矢とばかり棍棒を振りおろしたが、こんどもまたねらいが狂ったのである。夢中で身をしずめた私の横よこ鬢びんを、はるかにはずれて、棍棒はいやというほど岩をたたいた。

「あっ!」

はずみをくらって二、三步宙を泳いだ吉蔵の口から、痛烈な叫びがもれたと思うと、棍棒が手先を離れてくるくると二、三間さきへとんだ。岩をたたいた拍子に手がしびれたのであろう。私はとっさに身をしずめると立ち直った吉蔵の胸に、いやというほど頭ず突つきをくれた。

「うわっ!」

さすがの吉蔵もこの不意打ちにはたまりかねたのか、胸をおさえて尻しり餅もちをついた。そのすきに、私は一目散に逃げ出したが、このとき、私は眼がくらんでいたのにちがいない。途中で気がつくと、南無三! 私はまた「鬼火の淵」へむかっているのだ。しかもそれに気がついて、もとへ取ってかえそうとしたときには、追っかけてくる吉蔵の、ものすごい咆ほう哮こうと足音が聞こえてきた。

ああ、もうあとへはもどれない。

こうして私はふたたび、「鬼火の淵」の向こう側へと追いこまれる羽目になったのであった。

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