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大金块-猫眼石戒指(2)

时间: 2021-10-28    进入日语论坛
核心提示: ですから、わたしの父は暗号文書を持っていても、それをとくことができなかったのです。なんでも、ひどくむずかしい暗号で、一
(单词翻译:双击或拖选)

 ですから、わたしの父は暗号文書を持っていても、それをとくことができなかったのです。なんでも、ひどくむずかしい暗号で、一生涯(いっしょうがい)かかっても、どうしても、そこに書いてある意味を知ることができなかったのです。ただ暗号文書を、命から二番めにたいせつにして、じっと持っているばかりでした。
 父が亡くなりますと、その暗号は兄につたわりました。兄とわたしとは東京に出て、いろいろ苦労をしまして、ふたりとも、まあ人なみの暮らしをするようになったのですが、その兄というのが、また、かわりものでした。少し財産ができますと、こんな、みょうな洋館を建てて、世間づきあいをいっさいやめて、こっとういじりをはじめたものです。
 かわりものの兄は、たいせつな暗号文書をぬすまれてはたいへんだというので、知恵をしぼって、みょうなことを考えつきました。それは、暗号の紙を二つにさいて、兄とわたしとがその半分ずつを、めいめいに、どこか秘密のかくし場所へかくしておくという、きばつな考えなのです。
 それと申すのも、宮瀬家の大金塊といううわさが、いつとなく世間に知れて、暗号文書を高価にゆずってくれというものがあったり、あるときには、兄の家にどろぼうまではいったものですから、なんとなく危険を感じだしたのですね。
 兄はその暗号の半分を、ひじょうな苦心をして、兄が建てたこの家の中の、だれにもわからぬ場所へかくしたと申しておりました。そして、
『わしが生きているあいだは、おまえにもそのかくし場所をいわない。死ぬときに遺言としておまえにうちあける。』というのです。
 ところが、一年ほどまえ、その兄が急病で亡くなりましたが、わたしがかけつけたときには、もう息を引きとっていて、遺言をするひまもなく、とうとうそのかくし場所を聞かずにしまったのです。
 それから、なんどもこの建物の中だということを聞いていたものですから、わたしはすぐさま、兄のこの家へ引っ越しをして、一年のあいだというもの、すみからすみまでさがしまわったのですが、どうしても、その暗号の半分を発見することができませんでした。まさか、獅子の口の中とは気がつかないものですからね。」
「すると、賊は暗号をぬすんでも、なんの役にもたたないわけですね。」
 明智はそれに気づいて、ことばをはさみました。
 宮瀬氏は、にわかに、さもおかしそうに笑いだすのでした。
「ははは……、そうですよ。せっかくぬすんでいっても、なんにもならないのですよ。その半分の暗号というのはね、ほら、こうして、たえずわたしが身につけているのですよ。」
 宮瀬氏はそういいながら、右手のくすり指にはめていた、大きな指輪をぬきとって、明智の前へさしだしました。
「暗号の半分はこの指輪の中にしこんであるのですよ。わたしが考えたわけじゃありません。それも兄の知恵なのです。この指輪の石は、ねこめ石という宝石ですが、その石がはずれるようになっているのです。」
 そのねこめ石を、よりをもどすように、ぐるぐるまわしますと、石は台座をはなれて、その下にもう一つ、直径三ミリほどの、水晶のような透明な、小さな石がはめこんであるのが、あらわれてきました。
「これですよ。このけし(つぶ)みたいなガラス玉にしかけがあるのですよ。指輪を目の前に持っていって窓のほうをむいて、そのガラス玉をのぞいてごらんなさい。そこに暗号の半分がはいっているのです。よく考えたものじゃありませんか。兄は暗号の半分を、そのままわたしにわたさないで、けし粒ほどの写真にしたのですよ。そして、その写真を二枚の小さなレンズのあいだにはさんだのが、そのガラス玉です。(まめ)写真は、とても肉眼では見えないのですけれど、ガラス玉がレンズになって、大きく見えるのですよ。外国製のはさみの()などに、よくそういうガラス玉をはめこんだのがありますね。それをのぞいてみると、女優の写真なんかが見えるのです。これはあのやりかたをまねたのですよ。兄は、これさえあればいいのだといって、もとの暗号の半分の紙は焼きすててしまいましたがね。」
 明智はいわれるままに、その指輪のガラス玉のところを目にあてて、窓の光にかざして見ました。すると、これはどうでしょう。まるで顕微鏡でものぞくように、そのわずか三ミリのガラス玉の中にはっきりと左のような文字が読めたではありませんか。
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「かなばかりですね。なんだか意味がよくわかりませんが……。」
「わたしは何度も見ているので、文句は読めますよ。『獅子が烏帽子(えぼし)をかぶる時』でしょう。それから『カラスの頭の』でしょう。まあ、そうでも読むよりほかに読み方がないのです。しかし、むろんなんのことだかわけがわかりません。それに、これは暗号の半分なのですから、ぜんぶ合わせてみないことには、どうにも、ときようがないのです。」
「ふうん、なるほど、『獅子が烏帽子をかぶる時』ですか。みょうな文句ですね。」
 明智はひごろから暗号には、ひじょうに興味をもっているものですから、むちゅうになって、けし粒のようなガラス玉をのぞきつづけるのでした。
「獅子が烏帽子をかぶる」とはいったい何を意味するのでしょう。烏帽子をかぶった獅子なんて、絵にかかれたのも見たことがないではありませんか。そのうえ、あとの文句が「カラスの頭の」です。なんという、ぶきみな暗号でしょう。どこかしら深い山の奥にうずめられた、一億円の金貨のそばには、烏帽子をかぶった獅子や、おばけカラスが、じっと見はり番をつとめている、とでも、いうのでしょうか。

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