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大金块-机智勇敢的少年侦探(2)

时间: 2021-10-28    进入日语论坛
核心提示:「首領の帰りは夜中だといっていたから、たぶん十二時ごろなんだろう。それまでに仕事をすまさなければならない。しかし、あまり
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「首領の帰りは夜中だといっていたから、たぶん十二時ごろなんだろう。それまでに仕事をすまさなければならない。しかし、あまり早くても、部下のやつらが、そのへんを、うろうろしているだろうから、十時半ごろまで待つことにしよう。」
 小林君はそう考えて、腕時計を見ますと、まだ七時まえでした。三時間半も待たなければならないのです。
 ああ、そのあいだの待ちどおしさ。何度時計を見ても、針がおなじところにあるような気がするのです。
 でも、やっと、その長い長い三時間半がすぎさって、十時半がきました。
「さあ、いよいよはじめるんだ。小林! しっかりやるんだぞ。へまをやって明智先生のお名まえをけがすんじゃないぞ。」
 小林君は、われとわが名を呼びかけて、心をはげますのでした。
 牢の鉄ごうしの戸を開くのは、もうゆうべ経験ずみですから、わけはありません。れいの針金をまげたような形の万能かぎを取りだして、錠まえをはずし、なんなく、牢の外へ出ました。
 それから、うすぐらい廊下を耳をすまして、足音をしのばせながら、首領の部屋のほうへたどっていきました。
 そのとちゅうには、れいの部下たちの寝室があるのですから、その前はことに気をつけて、通らなければなりません。ぬき足さし足、その寝室のドアに近づいていきますと、中では部下のやつらが、何か大声に話しあって笑っているのが、もれ聞こえてきました。
 このぶんならだいじょうぶと、胸をなでおろして、そのドアの前を通りすぎ、いよいよ首領の部屋へはいっていきました。
 それからの秘密の通路は、前にしるしたとおりですから、ここにはくりかえしませんが、小林君はやはり、ゆうべとそっくりの順序で、地上の建物の、あの美しい女首領の寝室へしのびこみました。
 思ったとおり、その寝室はからっぽでした。あのりっぱなベッドの上には、まっ白な絹のきれがかぶせてあって、しわ一つよっていませんし、部屋ぜんたいがきちんとかたづいていて、ただ、ほのかに香水のにおいがただよっているばかりです。
 小林君はその部屋にはいると、わき目もふらず、つかつかと、れいの鏡台の前に近づき、その上に乗せてあるたくさんの化粧品のびんの中から、ゆうべ女首領が手に取ったあのクリームのつぼをさがしだして、そのふたを開くと、いっぱいつまっている白いクリームの中へ、いきなり、指をつっこみました。
 おやおや、小林君は気でもちがったのでしょうか。真夜中、賊の寝室にしのびこんで、男のくせにお化粧をするつもりなのでしょうか。
 いや、そうではありません。ごらんなさい。小林君は、クリームの中から、何か小さなパラフィン紙の包みをつまみだしたではありませんか。
 そのパラフィン紙をていねいに開きますと、中から、一枚の古びた日本紙が出てきました。
「あ、これだ――。」
 小林君は、うれしさに顔を赤くしました。その日本紙の切れっぱしこそ、だいじなだいじな宮瀬家の暗号文だったのです。一億円の大金塊のかくし場所をしるした暗号文だったのです。
 ああ、なんというきばつなかくし場所でしょう。あのたいせつな暗号を、化粧品のつぼの中へ、むぞうさにつっこんでおくなんて、じつにうまい思いつきではありませんか。
 小林君はポケットから手帳を出して、暗号文をだいじそうにその中にはさみ、それから、手帳の紙を一枚やぶって、それに鉛筆で何か手紙のようなものを書き、手帳は内ポケットへ、手紙の紙は外のポケットへ入れました。
 そして、クリームの表面をもとのように平らにして、ふたをしめ、もとの場所において、そのままカーテンのうしろの、暗い小部屋へもどりました。
 読者諸君もごぞんじのとおり、この小部屋には、賊の首領の覆面と、ルパシカという洋服がかけてあるのです。小林君は何を思ったのか、それを一まとめにしてこわきにかかえ、そのまま、あのマンホールのような板をあげて、鉄ばしごをくだりました。
 鉄ばしごをおりきると、れいの大きな西洋だんすの中ですが、小林君は、そのたんすからはいだして、その前でみょうなことをはじめました。
 首領の寝室のつぎの間から持ちだしてきた、ルパシカとズボンとを、洋服の上に着はじめたのです。それを着てしまうと、こんどはビロードの覆面を、頭からすっぽりとかぶりましたが、すると、今までかわいらしい少年であった小林君が、たちまち、あのおそろしい首領の姿にかわってしまいました。
 小林君は年にしては背の高いほうでしたし、賊の首領は女のことですから、ふつうの男よりも背がひくかったので、ルパシカもズボンも、だぶだぶしてこまるというようなこともなく、うまいぐあいに、身についています。
 これが、小林君の妙案だったのです。こうして首領に変装して、番人の前を大手をふって通りすぎようという、思いつきなのです。
 覆面の怪物になりますと、手には、さっき手帳をちぎった紙を持って、そのまま首領の部屋を出ました。そして、うすぐらい廊下を、地下室の出口のほうへ、のこのこと歩きだしたのです。
 出口がどこにあるか、はっきりわからないものですから、廊下をぐるぐるまわっているうちに、むこうからひとりの部下のやつがやってくるのに出あいましたが、小林君は平気な顔で、そりかえって歩いていきますと、部下のやつは、小林君を首領がいつのまにか帰ってきたものと思いこんで、ぺこぺことおじぎをするのでした。
「うまいうまい、これならだいじょうぶだぞ。」
 小林君はすっかりとくいになって、いよいよ肩をいからせながら、のしのしと歩いていきました。
 まもなく、地下室の出口が見つかりました。そこには厚い板戸がしめてあって、その前の小部屋に、ひとりの大男がイスにかけて見はり番をしています。いかにも強そうなやつです。
 しかし、小林君は平気で、その男の前へ近づいていきました。そして、だまってつっ立ったまま、男の鼻の先に、手帳の紙のたたんだのをさしだし、「外出するから戸を開け。」という身ぶりをしてみせました。
 番人はるすだと思っていた首領が、とつぜんあらわれたので、ちょっとびっくりしたように見えましたが、いつもどこから帰ってくるかわからない首領のことですから、べつに深くうたがうようすもなく、ぺこぺこおじぎをしながら、厚い板戸をギーッと開いてくれました。
 小林君は、しめたと思いながら、そのまま、ゆうゆうと外のくらやみへ出て、そこにあるコンクリートの階段を、地上へとのぼっていきます。
 番人は、そのあとを見送って、板戸をしめると、もとのイスにもどって、いま手わたされた紙きれを開いてみました。首領の命令書だとばかり思いこんでいたのです。
 ところが、その紙きれを、うすぐらい電灯のそばに近づけて、読みくだしたかと思うと、番人は、「アッ。」というおどろきのさけび声をたてました。目をまんまるにみひらいて、口をぽかんとあけて何がなんだかわからないという顔つきです。
 その紙きれには、つぎのような痛快(つうかい)な文句がしたためてありました。

暗号文はもらって帰ります。そして、正しい持ち主に返します。いろいろごちそうしてくださってありがとう。では、さようなら。

明智探偵助手  小林芳雄(よしお)

 

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