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黄金豹-猫姑娘

时间: 2021-12-01    进入日语论坛
核心提示:ネコむすめ まっ黒に、そびえている西洋館に近づくと、フッと、男のすがたが見えなくなってしまいました。たぶん西洋館の中へ、
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ネコむすめ


 まっ黒に、そびえている西洋館に近づくと、フッと、男のすがたが見えなくなってしまいました。たぶん西洋館の中へ、はいったのでしょうが、入口のドアが開いたようすはありません。窓からでも、しのびこんだのでしょうか。
 小林君は、しばらく、ためらっていましたが、おもいきって、西洋館の入口のところへいって、そこのドアを、とんとんと、たたいてみました。二、三度たたきますと、中から、なにものかがドアを開いて顔をだしました。
 小林君は、いざというときの用意に、ポケットの中に手を入れて、ピストルをにぎりしめていましたが、ドアを開いたのは、あのあやしい男ではなくて、小さな女の子でした。
 そのとき、ドアの中の電灯がついたので、少女のすがたがよく見えたのです。女中ではありません。まだ十歳ぐらいのかわいらしい女の子です。ここのうちの娘かもしれません。
 それにしても、こんなま夜中に、小さな女の子が、ちゃんと、昼まの服をきて、おきているのは、なんだかへんだと思いましたが、小林君は、ともかく、たずねてみました。
「きみ、ここのうちの子なの?」
「ええ、そうよ。」
 少女は、すずのように美しい声で、答えました。
「いまね、あやしい男が、このうちへ、しのびこむのを見たんだよ。おとうさんか、おかあさんがいたら、ぼくにあわせてくれない?」
「ええ、いいわ。こちらへいらっしゃい。」
 少女はそういって、奥の方へはいっていきます。なんだか、ひどく、おませさんのようです。
 小林君がついていきますと、少女は応接間のような洋室へはいり、スイッチをおして電灯をつけました。むかしの西洋の絵で見るような、古いりっぱな家具がならんでいます。いっぽうの壁には、石炭をたくだんろがついていて、その上の壁に、大きな(かがみ)がはめこみになっています。
 少女はそこにある、りっぱな長イスにこしかけました。すると、へんなことがはじまったのです。むこうの開いているドアから、一ぴき、二ひき、三びきと、ネコがぞろぞろ、はいってきました。十ぴき以上です。大きさも、毛の色も、みんなちがっています。
 なかには豹の子のような、大きなぶちのネコもいます。小林君はそれをひとめ見たとき、黄金豹の子どもではないかと、ギョッとしたほどです。しかし、豹によくにているけれども、豹ではなくてネコであることが、わかりました。
 その子豹のようなネコは、あとからはいってきたくせに、ほかのネコたちをおしのけて、少女のひざの上にのって、あまえるように少女の手をなめるのでした。
 ほかのネコたちも、少女のまわりをとりかこんで、長イスの上や、少女の足のそばに、むらがっています。一ぴきの子ネコは、少女の背中から肩にのって、少女の首に顔をあてて、あまえています。
「これ、みんな、きみのうちのネコなの?」
 小林君が、びっくりしてききますと、少女はニッコリ笑って、
「そうよ。あたしのうち、ネコやしきなの。」
と、少女は、おませなくちょうで、すまして答えました。
 ネコやしきときくと、小林君は、このお話のはじめのほうにでてきた、『ネコじいさん』のことを思いだして、なんだかきみが悪くなってきました。ここは、『ネコじいさん』のすみかではないでしょうか。
「きみのうちに、おじいさんいる? ネコのすきな、白いひげのあるおじいさんだよ。」
 思わず、たずねますと、少女はけろりとした顔をして、
「おじいさんなんか、いないわ。おかあさんと、あたしだけよ。」
と答えましたが、その顔を見て、小林君は、また、ゾッとしました。少女の顔が、ネコとそっくりに見えたからです。
 ネコはみんな、かわいい顔をしていますが、この少女の顔が、そのかわいいネコとそっくりなのです。ネコが少女に化けているのではないかと、思われるほどです。これは、『ネコむすめ』ではないのでしょうか。
 小林君は、むかしの『化けネコ』の話を思いだしました。
 こんなかわいい顔をしているけれど、いまに少女の口が、ギャッと耳までさけて、とびかかってくるのではないかと思うと、ゾッとして、逃げだしたくなるほどでした。
 小林君は、しばらく考えていましたが、せっかく、あやしい男のことを知らせにきたのですから、ともかく、少女のおかあさんにあって、話してみようと思いました。
「それじゃ、きみのおかあさんに、あいたいが、おかあさんは、うちにいらっしゃるの?」
「ええ、いるわ、いま、ここへいらっしゃるのよ。ほら、足音が聞こえるでしょう。」
 少女が、やさしいネコの顔でいいました。しかし、小林君にはなにも聞こえません。この少女は、人間に聞こえない音を聞きとる耳を持っているのでしょうか。
 すると、そのとき、一ぴきのネコが、長イスからとびおりて、むこうに開いているドアの方へ、かけだしていきました。それにつづいて、二ひき、三びき、四ひきと、みんなドアの方へ、かけだしていくのです。
 ネコどもは、早くも、おかあさんのくるのを、かぎつけたのでしょう。

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