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灰色巨人-不可思议的贼巢

时间: 2021-11-28    进入日语论坛
核心提示:ふしぎな家 園井さんを乗せた賊の自動車は、ほそうされた、たいらな道路を五十分ほども走って、やっと停車しました。ずいぶん遠
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ふしぎな家


 園井さんを乗せた賊の自動車は、ほそうされた、たいらな道路を五十分ほども走って、やっと停車しました。ずいぶん遠くへきたらしいのです。
「さあ、おりるんだ。これからさきは、車がはいらないから、歩くんですよ。」
 園井さんのとなりに乗っていた、賊の部下が、そういって、園井さんの手をとって、自動車からおろしました。
 園井さんは、宝冠の箱のはいっているふろしきづつみをかかえて、ひかれるままに、ついていきますと、いっぱい草のはえた登り道を、歩いていることがわかりました。草ばかりでなく、いろいろな木がはえているらしく、ズボンがその枝にひっかかるのです。そして、あたりは、森にでもはいったように、ひえびえとして、植物のにおいが強くただよっていました。
 東京から一時間ぐらいのところに、山はありませんが、小さな丘くらいはありますから、そういう丘を登っているのだろうと考えました。
 道らしい道もない森の中らしく、草や木の枝をかきわけて進むのですから、目かくしされている園井さんは、歩くのがたいへんでした。賊の部下は、そんなことはおかまいなく、じゃけんにぐんぐん手をひっぱるので、なんどもつまずいて、ころびそうになるのでした。十分ほども、そういう山道のようなところを歩きますと、こんどは、せまいほら穴の中へ、ひっぱりこまれました。
「ここから地下へもぐるんだよ。石のだんがついているが、せまいから気をつけて。」
 賊の部下は、そういって、園井さんを助けながら、ゆっくりと、おりていきました。
 穴の中を三メートルほどおりると、こんどはトンネルのような、よこ穴になりました。せまい穴なので、立って歩くことはできません。身をかがめて、はうようにして進まなければならないのです。
 園井さんは、おそろしくなってきました。いったいこのほら穴は、どこへつづいているのでしょう。もうこのまま、うちへ帰れなくなるのではないでしょうか。
「正一は、地下室にとじこめられているのですか。」
とたずねますと、賊の部下は、ぶあいそうに答えました。
「そうじゃないよ。この道は、また登りになって、地面の上に出るのだ。あんたの子どもは、そこの、りっぱなコンクリートのたてものの中で、だいじにされているよ。」
 すると、もうそこが登りの階段でした。せまい石のだんを、また三メートルほどはいあがり、広い場所に出ました。そして、二十歩ほども歩くと、いすのようなものにこしかけさせられ、目かくしをはずしてくれました。
 目をひらくと、すぐまえに、りっぱなテーブルがあり、その上に、美しいほりもののある燭台(しょくだい)がおかれ、五本のロウソクが、明るくもえていました。
 テーブルのむこうがわには、まっ白なものと、まっかなものがありました。なんだかびっくりするようなものでした。よくみると、それはひとりの老人でした。まっ白なふさふさとしたかみの毛、胸までたれたまっ白なあごヒゲ、もう七十歳ぐらいの老人です。それがピカピカ光る、まっかながいとうのようなものをきて、大僧正(だいそうじょう)でもかけるような、りっぱないすにこしかけているのです。赤いがいとうのえりのあたりに金糸(きんし)のもようがあり、それに宝石が、たくさんついています。これも大僧正のきるガウンとそっくりの、きらびやかなものでした。
 園井さんは、めんくらってしまいました。地下道を通って、べつの世界へきたような感じです。まるで、童話の国の王さまの前にでも、出たような気がするのです。
 それから、部屋の中を見まわしますと、部屋そのものが、またじつにみょうな形をしていました。百畳もあるような、おそろしく広い部屋です。それが、四角ではなく、だえん形のいびつな部屋で、まわりのかべはコンクリートなのですが、それがまた、まっすぐではなくて、へんにまがっているのです。あるところでは、ぐっとくぼんでいるかと思うと、あるところでは、みょうに出っぱっているという、このごろはやる、新しい彫刻のような感じなのです。
 それに、窓というものが、ひとつもありません。てんじょうは板ばりになっていて、その上が二階らしいのですが、二階への階段は、まがったコンクリート壁にそって、鉄ばしごのようなものが、ななめにかかっています。まるで、コンクリートの壁を、ヘビがはっているような感じです。
 そのいびつな広い部屋のまわりには、宝石店のショーウィンドーのようなガラスだなが、ずらっとならんでいます。遠くて、よくは見えませんが、そのガラスだなの中には、赤や青やむらさきのビロードのケースにはいった金銀の美術品が、いっぱいかざってあります。それには、みな宝石がちりばめてあるらしく、キラキラと、美しくひかっているのです。宝石の首かざりや、うでわなども、ならべてあります。
 じつにふしぎな家です。しかし、怪盗「灰色の巨人」のほんきょには、いかにも、ふさわしい場所です。怪盗は、じぶんの美術館にかざるために、「にじの宝冠」がほしいのだといっていましたが、たしかに、ここは、りっぱな美術館でした。
「その箱が、にじの宝冠ですか。お見せなさい。」
 白ヒゲの老人が、しわがれた、おもおもしい声でいいました。
 園井さんは、うっかり箱をわたして、取りあげられてしまってはいけないと思いましたので、
「これを見せるまえに、正一にあわせてください。正一とひきかえという約束ではありませんか。」
 こちらも、強くいいはりました。
 すると、老人はにやりと笑って、
「よろしい、わたしはけっして、約束はやぶりません。だれか、正一君をよんできなさい。」
と、うしろの方にさがっていた部下のものにいいつけました。すると、部下は、うやうやしく頭をさげて、鉄の階段を、二階へのぼっていきました。
 それでは、正一は二階にかんきんされているのかと、園井さんは、じっと、その方を見ていますと、やがて、鉄の階段の上から、ひょいと、少年の顔がのぞきました。
 正一君です。園井さんは、思わずいすから立ちあがりました。
 正一君も、おとうさんの姿を見て、あっと小さなさけび声をたて、階段をかけおりてきました。そして、おとうさんのそばへいこうとしますと、よこから、賊の部下がとびだしてきて、正一君をだきとめました。
「まず『にじの宝冠』を見せてください。それが、ほんものだとわかるまでは、正一君をわたすことはできません。」
 老人が、しずかにいいました。園井さんは、しかたがないので、ふろしきづつみをといて、黒ぬりの箱を出し、そのふたをひらいて、老人の前にさしだしました。
 老人は「にじの宝冠」を手にとって、いかにもうれしそうに、長いあいだ、ながめていましたが、にせものでないことが、よくわかったらしく、深くうなずいて、
「ああ、じつに美しい、この光は、まったくにじのようじゃ。園井さん、たしかに『にじの宝冠』ちょうだいした。わしの美術館の宝物として、長く保存しますよ。それじゃあ、正一君を、おひきとりください。」
といって、部下に目でさしずをしました。部下はまた、うやうやしくおじぎをして、正一君を園井さんのそばへつれてきました。
「おとうさん!」
「正一、ぶじでよかったなあ。」
 親子は手をとりあって、よろこびあうのでした。
 それから、園井さんも、正一君も、また目かくしをされて、部下のものに手をひかれ、せまい地下道を通り、そこを出ると、森の中の草をふみわけて、丘をくだりました。そして、そこに待っていた賊の自動車に乗せられて、東京にもどり、神宮外苑(じんぐうがいえん)のさびしい林の中で、おろされてしまいました。
 園井さんと正一君は、目かくしをとって、どことも知れず走りさる賊の自動車を見おくってから、外苑を出て、大通りを走るタクシーをよびとめ、ぶじにおうちに帰ることができました。
 それにしても、あのきみょうな形をしたコンクリートのたてものは、どこにあるのでしょうか。東京から一時間ばかりの丘の上。いったいその丘は、どこなのでしょうか。

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