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透明怪人-另一个小丑

时间: 2021-11-14    进入日语论坛
核心提示:第二の道化師 窓をひらいても、れいによって、影のぬしは何も見えません。黒川記者は舌うちしながら、席にもどるほかはありませ
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第二の道化師


 窓をひらいても、れいによって、影のぬしは何も見えません。黒川記者は舌うちしながら、席にもどるほかはありませんでした。
 さて、その夜十時ごろになると、文代さんは寝室のベッドにはいり、小林少年はその左がわの自分の寝室へ、中村係長と黒川記者は、文代さんの部屋の右がわの客用の寝室へ、ひきとりました。三人の刑事は徹夜のかくごで、ふたりは裏庭に、ひとりは玄関に、がんばっています。
 ただでさえさびしい屋敷町です。夜がふけるにつれて、遠くからの物音もとだえ、そのあたりいったいは、まるで大きな森の中へでもはいったように、しずまりかえっていました。
 まよなかの十二時をすぎ、一時に近いころ、探偵事務所の裏庭のそとに、ちょっとわけのわからない、みょうな出来事がおこりました。
 探偵事務所は、明智の住宅をもかねていて、一〇〇平方メートルほどの裏庭には、いろいろな木が美しくうえてあるのですが、ふたりの刑事は、よくしげったひのきのかげに、イスを持ちだして、それに腰かけ、木の枝のあいだから、四方に目をくばっていました。腰かけているばかりではありません。ときどき、そのうちのひとりが、イスから立って、塀のそとの道路まで出て見ることもあるのです。
 裏庭と道路とのさかいには、ひくいコンクリート塀があり、そこに出入り口のくぐり戸がついているのです。塀のそとには街路灯が立っていて、それが庭の中までも、かすかに照らしています。
 いま、ひとりの刑事が、イスをたちあがって、庭をよこぎり、そのとき、くぐり戸をひらいて、そとの道路に一歩ふみだしたのですが、出たかと思うと、ギョッとしたように、たちすくんでしまいました。
 さびしい裏町のことですから、この夜ふけに、だれも通るものはないはずだと、思いこんでいたのに、見ると、すぐむこうの街路灯の柱のそばに、みょうなものが立っているではありませんか。それは、まっかな着物を着た、大きな人形のようなものでした。
 刑事とその人形のようなものは、二十メートルほどへだてて、しばらくにらみあいをつづけていました。じっと見ていると、それは人形ではなくて、生きた人間、赤と白のだんだらぞめの道化服を着た人間であることが、わかってきました。
「アッ、あいつだ。きょうの夕がた、公衆電話の中で消えうせたという、あの道化師にちがいない。」
 刑事は、とっさに、それをさとると、いきなり道化師にむかって、飛びかかっていきましたが、道化師のほうでも、そのときはもう、いちもくさんに、かけだしていました。ばかに足の早いやつです。
 刑事は走りながら、呼びこをとりだして、ピリピリ……と吹きならしました。裏庭にいたもうひとりの刑事がそれをきいて、飛びだしてきましたが、さきの刑事とのあいだは、もう五十メートルもへだたっています。とてもおっつけるものではありません。
 さきの刑事は、また逃がしてしまうのかと、ざんねんでたまりません。歯をくいしばって、死にものぐるいのスピードをだしました。しかし、あいてはそれよりも早く走るのです。そうして、町かどを三つほど通りすぎたときです。走っていた道化師が、何を思ったのか、ピッタリ立ちどまってしまいました。
 見ると、むこうのくらやみの中に、怪物の目玉のような懐中電灯が光っています。それはふたりの制服巡査でした。このふきんの警戒にあたっていた巡査が、今の呼びこを聞きつけて、道化師のゆくてに立ちふさがってくれたのです。
「しめたッ!」刑事は心にさけびながら、いきなり道化師に近づくと、柔道の手で、みごとに、パッと、あいてを地面に投げたおし、その上から、馬のりになってしまいました。
「きさま、透明怪人だな、こんどこそ、もう逃がさないぞ。」
 そして、道化師のろう仮面を、はがそうと、顔に手をかけたのですが、それはお面ではなくて、ほんとうの人間の顔であることがわかりました。
「おや、それじゃ、きさま、透明人間じゃなかったのか。」
「そんなもんじゃありません。チンドン屋の紅丸(べにまる)っていうものです。人ちがいです。わたしゃ、何も悪いことはしません。はなしてください……。」
 くみしかれた道化師は、泣き声をたてて、わめきました。
「それじゃ、この夜ふけに、どうしてあんなところに立っていたんだ。」
「たのまれたんです。」
「たのまれた? だれに、何をたのまれたんだ。」
「だれかわかりません。三時間ほどまえ、道で行きあった紳士です。五千円札をくれました。そして、さっきのうちの、塀のそとに立っていろ。そこへおまわりさんが来るが、塀の中から人が出てきたら、いちもくさんに逃げだせというんです。それで五千円なら、うまい話だから、しょうちしたんです。」
 懐中電灯でよく見ると、このチンドン屋は、いかにもまぬけな顔をしていました。五千円に目がくらんで、こんなつまらない役目をひきうけたというのも、まんざらうそではなさそうです。
 しかし、もしこの男の言うのが、ほんとうだとすると、その紳士は、なんのために、そんなことをたのんだのでしょう。刑事は首をかしげました。
「ともかく、中村係長のところへ、ひっぱっていくことにしようじゃないか。これには、何かわけがありそうだぜ。」
 あとからやってきた、もうひとりの刑事が、道化師に馬のりになっている刑事の耳に、ささやきました。
 そこで、さきの刑事は、やっと立ちあがって、チンドン屋をおこしてやり、その手くびを、かたくにぎったまま、グングンと、もと来たほうへ、ひっかえしました。もうひとりの刑事とふたりの警官も、そのあとにしたがいます。
 三百メートルあまり、もどって、探偵事務所の裏口に近づきますと、そこに黒川記者がまちうけていました。
「どうしたんです。なんだかさわがしいので、目をさまして、ここまで出てみたんだが。」
「ああ、黒川さんですか、こいつけしからんやつです。だれかにたのまれたと言って、そこのところに立っていたんですよ。夕がたの道化師のことを聞いているものだから、てっきり透明怪人だと思って、おっかけたんです。こいつ、ばかの足の早いやつで、大あせをかきましたよ。」
 刑事は、いまの出来事を、すっかり話してから、
「やっぱり、一度、中村係長さんに、しらべていただきたいと思って、しょっぴいてきたのです。」
「ウン、中村さんは、よほどつかれていたとみえて、グッスリねこんでいる。だから、起こさないで、ぼくひとり出てきたんだが、それじゃ、中村さんを起こして、ここへ来てもらうことにしよう。」
 黒川記者は、そう言って、裏庭のおくに、すがたをけしました。ところが、黒川記者が、うちの中にはいってみると、そこには、じつにおどろくべき、珍事がおこっていました。魔法使いの怪老人は、またしても、おそろしい魔法をつかったのです。

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