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铁人Q-以四对一

时间: 2022-01-30    进入日语论坛
核心提示:ひとりと四人 小林君とポケット小僧が、はいってくるのを見て、中井、北見の二少年は、びっくりしましたが、おたがいに、顔を知
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ひとりと四人


 小林君とポケット小僧が、はいってくるのを見て、中井、北見の二少年は、びっくりしましたが、おたがいに、顔を知っているので、きっと、助けにきてくれたのだと、すぐ安心しました。
 小林君は、ふたりの少年を、いまはいってきた裏口から逃がすつもりでした。その裏口の外には三人の刑事が、待ちかまえていて、二少年を守ってくれるはずです。
 小林君が、そのことを話しますと、中井少年が、うれしそうに答えようとしましたが、はっとしたように口をとじました。そして、口の前に、指を立ててみんなをだまらせ、心配そうに耳をすますではありませんか。
 廊下に、遠くの方から、パタン、パタンという足音が聞こえてきます。
「鉄人Qの部下のやつが、御飯を、運んでくるのですよ。ちょうどいまごろ、晩御飯を持ってくるんです。」
 中井君が、ささやきごえでいいました。
 さあ、たいへんです。せっかく苦心して、ここまで運んだのに、そいつが来れば、なにもかもだめになってしまいます。
「ぼくたち、どっかへ、かくれようか。」
 ポケット小僧が、ささやきます。
「だめだよ、この部屋には、かくれるところなんてないよ。」
 中井君が答えました。
「よし、そいつを、やっつけちゃおう。こっちは四人だ。相手は、いくら力が強くても、たったひとりだよ。それにはいいことがある。」
 小林君はそういいながら、シャツの下にまきつけていた、絹糸のなわばしごを、大いそぎでひっぱりだすと、ポケットからナイフを出して、それを三つに切りました。
 それから、そこにあった二つのいすを、ドアのすぐ内がわの、両方のかべぎわにおき、一本の絹糸を二つのいすのあしからあしへわたして、しばりつけました。つまり、床から十センチぐらいのところに絹糸が、はりわたされたわけです。
 それを、手早くやったので、やっとまにあいました。部下のやつは、もうドアの外まできていたのです。
 小林君は、残る二本の絹糸の一本を、じぶんが持ち、残る一本を、中井君にわたし、それから、みんなの持っているハンカチを出させて、それをポケット小僧にわたしました。
 みんな、かしこい少年たちですから、なにもいわなくても、その意味がちゃんとわかったのです。そして、小林君とポケット小僧は、すばやくベッドの下へもぐりこみました。
 部下のやつはもうはずれているかぎあなへ、かぎをいれて、ガチャガチャやっていましたが、
「おや、へんだぞ。おれは、さっき、かぎをかけるのを、わすれたのかな。」
と、ふしぎそうに、つぶやきながら、ドアを開いて、ヌッと、はいってきました。手には、大きなおぼんに、晩御飯をのせて、持っています。
 ガチャンと、おそろしい音がしました。部下のやつは、あの絹糸に足をとられて、ころんだのです。おぼんが投げだされ、御飯や、おつゆが、あたりにとびちりました。
「そらっ。」
 小林君のかけ声で、四人の少年は、一度に、倒れている部下に、とびかかっていきました。
 部下のやつは、ころんだとき、どこかを打ったらしく、起きあがる力もなく、たちまち、両手、両足を、しばられてしまいました。助けを呼ぼうにも、ポケット小僧が、さっきの四つのハンカチをまるめて、口の中へ押しこんだので、声を出すことができません。
「よし、このまに、きみたちふたりを、裏口にいるおまわりさんに、わたすことにしよう。さあ、来たまえ。はやく、はやく。」
 小林君は、中井、北見の二少年を、せきたてながら、部屋を出て、廊下を裏口へといそぎました。
 ポケット小僧も、そのあとからついていきます。
 裏口を出ると、そこに、さっきの三人のおまわりさんが、待ちかまえていました。
「さ、これが中井君と北見君です。外へ連れだしてください。ぼくたちふたりは、中へもどって、鉄人Qを捜します。見つけたら、知らせますから、それまで、ゆだんなく、このうちのまわりを見はっているように、みなさんにいってください。」
 小林君とポケット小僧は、二少年をおまわりさんたちに、あずけておいて、そのままおばけやしきの中へ、引きかえしました。
 さっきの部屋へ、はいってみると、部下の男は、しばられたまま、倒れていました。鉄人Qは、まだこのことを気づかないようです。
「おい、ポケット君、おばけに変装しよう。ほら、この一つ目小僧の仮面をかぶるんだよ。そうすれば、顔がわからないから、もし、だれかに見つかっても、ぼくたちを中井君や北見君だと思うかもしれないね。ね、そうしよう。」
 そこで、ふたりは、テーブルの上においてあった、青い服を着ました。そして、あの一つ目小僧の仮面を、頭からスッポリとかぶったのです。中ぐらいのと、小さいのと、ふたりのおばけが、できあがりました。
「さあ、このうちの中を、しらべよう。そして、もし鉄人Qを見つけたら、すぐおまわりさんに知らせるのだ。」
 ふたりは部屋の外へ出て、ドアをピッタリしめ、万能かぎで、外からドアのしまりをしました。
 そして、うす暗い廊下を、奥の方へと、歩きだしたのですが、まもなく、廊下は、行きどまりになってしまいました。
「へんだなあ。この廊下には、ひとつもドアがないよ。しかたがない、引きかえそう。」
 ふたりは、もと来たほうへ、もどろうとしましたが、ひょいと、ふりかえってみると、いままで、裏口の方へ、つづいていた廊下が、すっかり、壁になってしまって、どこにも出口がないことが、わかりました。
「おやっ、どうしたんだろう。向こうに、壁ができちゃったぞ。」
「ウフフフ……、小林さん、だから、ここはおばけやしきなんだよ。おれたちは、おばけの魔法にかかっちゃったのさ。」
 大胆なポケット小僧は、へいきで、笑っています。
 廊下は長さ十メートルほどの、細長い箱のようになって、ふたりは、そこに、とじこめられてしまったのです。そして、そこにはドアがひとつもないのです。
 おばけやしきのことですから、なにかのしかけで、いつのまにか、廊下を、箱のように、かえてしまったのでしょう。
 小林君は、その細長い箱の中を、グルグルまわって、どこかに出口はないかと、捜しまわりました。
 すると、つきあたりの板壁のすみに、押しボタンのように、出っぱったものがあることに気がつきました。
 ためしに、指でぐっと押してみますと、そこの壁の一部が、ドアのように、スーッと、音もなく開きました。
 中は、せまいトンネルのように、まっくらです。
「はいってみようか。」
「うん、ほかに出口がないから、しかたがないよ。」
ふたりは、おずおずと、そのくらやみの中へ、はいっていきました。
 トンネルのようなところを、五メートルほど進みますと、つきあたりに、またドアがあって、それがひとりでに開きました。
 ふたりは、その中へはいりましたが、すると、いきなり、あたりがパッと明るくなって、目がくらみそうになりました。
「あっ、いけない。あとにもどるんだっ。」
 小林君が、叫んで、うしろへ引きかえそうとしましたが、いつのまにか、ドアはピッタリしまって、押せども引けども動きません。

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