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铁人Q-怪人

时间: 2022-01-30    进入日语论坛
核心提示:怪人のおくの手 こちらは、おばけやしきの中です。中村警部は、警視庁に電話をかけて、ヘリコプターを飛ばすようにたのんでおい
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怪人のおくの手


 こちらは、おばけやしきの中です。中村警部は、警視庁に電話をかけて、ヘリコプターを飛ばすようにたのんでおいてから、三人の刑事や、小林少年や、ポケット小僧といっしょに、家の中をさがしまわって、五人の鉄人Qの部下をとらえました。その中には、あの四角なロボットにばけて、北見、中井の二少年をおどしたやつも、まじっていたのです。
 小林少年たちが、しばっておいた、あの食事を運んできた部下も、刑事がその部屋へいって、あらためて手錠をかけました。
 おばけやしきには、三千代ちゃんのほかに、ふたりの少女がとじこめられ、赤い服をきせられ、一つ目小僧の仮面を、かぶせられていましたが、そのふたりも、たすけだすことができました。
 ところが、かならずいるにちがいない、あの怪老人の姿が、どこにも見えないのです。鉄人Qをつくった白ひげの怪老人です。
 鉄人Qが、ほんとうにロボットだとすれば、こんな悪いことをするロボットをつくったあの老人は、ばつをうけなければなりません。
 また、もし、鉄人Qがロボットでなくて、中に人間がはいっているのだとしたら、怪老人はその親分みたいなものですから、いっそう、罪が深いのです。
 Qを逃がしてしまったからには、あの老人だけは、どうしても、つかまえなければなりません。その老人が、いくら捜してもみつからないのですから、中村警部も小林君も、残念でしかたがありません。
 そのとき、はるか家の外から、ピリピリピリ……という、よびこの笛の音が、聞こえてきました。
「おや、あれはよびこだね。しかし警官の持っているよびことは、音がちがうようだが……。」
 中村警部が、ふしんらしくつぶやきますと、小林少年が、にこにこ笑いながら、答えました。
「少年探偵団のよびこです。ぼくたちの七つ道具の一つのよびこです。わざと、音をちがえてあるのですよ。ぼく、さっき、北見君たちをたすけだしたとき刑事さんに、明智探偵事務所へ電話をかけてもらいました。ぼくはここへくるまえに、五人の少年団員が、事務所へ集まって、待っているようにしておいたのです。刑事さんはその団員たちに、この家の外を見はるように、つたえてくれたのです。いまのよびこは、きっとその団員たちですよ。家の外で、だれか、悪者を見つけたのです。さあ、すぐにいってみましょう。」
 中村警部と小林少年は、三人の刑事をQの部下たちの見はりに残しておいて、家の外へかけだし、よびこの音のした方へいそぎました。
 そのすこしまえ、おばけやしきの裏手のへいの外では、こんなことがおこっていたのです。
 事務所から、いそいで、ここへやってきた団員は、中学一―二年の力の強い少年ばかりでした。
 少年たちは、外を見はっていた刑事たちと相談したうえ、裏手の、原っぱの番をすることになりました。
 それは、草ぼうぼうの原っぱでしたから、五人は、その草の中に、身をふせて、じっと待っていました。
 しばらくすると、すぐ向こうの、へいの上に、黒い影が、動いているのに気づきました。悪者が、逃げだすのにちがいありません。
 少年たちは、たがいに手をつなぎあって、とびだす用意をしました。
 そのとき、へいの上の黒いやつは、パッと、原っぱへとびおりたのです。
 それを見た少年たちは、いきなり、草の中から立ちあがり、かけだしていって、相手にとびつきました。
 やみの中で、おそろしいとっくみあいがつづきました。
「あっ、こいつ、白ひげのじいさんだっ。」
 だれかが叫びました。とうとう、五人の少年の力で、老人をくみふせてしまったのです。その中のひとりが、七つ道具の一つの万年筆型懐中電灯で、老人の顔をてらしたのです。
 ひとりの少年がポケットから、よびこの笛をとりだして、吹きならしました。
 さっき家の中で、中村警部や小林少年が聞いたよびこの音は、これだったのです。
 やがて、中村警部たちが、かけつけてきました。そして怪老人は、なんなく、手錠を、はめられてしまいました。
「きみたち、ありがとう。このじいさんだけが、見つからなかったのだ。よく、つかまえてくれたねえ。」
 小林少年が、おれいをいいますと、中村警部も、それにつづいて、少年たちを、ほめたたえるのでした。そして、
「うちでしんぱいしているといけないから、きみたちは、早く帰りなさい。いずれ今夜のごほうびを、あげるからね。」
と、やさしくいうのでした。
 そこで、五人の少年と、小林君とポケット小僧とは、中村警部にタクシーをおごってもらって、それぞれのうちへ帰ることになりました。
 つかまった悪者たちは、警視庁から、さしむけられた、窓のない、箱のような自動車につめこまれて、留置場へ、おくられたのです。
 その途中で、たいへんなことがおこりました。
 夜ふけのことですから、あまり自動車も通っていないので、安心して走っていきますと、向こうから、一台の黒い自動車がやってきて、こちらのよけるほうへ向かってくるので、とうとう、正面から衝突してしまいました。
 いそいで、ブレーキをかけたので、車がこわれるほどではなく、けが人もありませんでしたが、衝突のひょうしに、箱形の自動車のうしろのドアが開いて、そのそばに腰かけていた怪老人が、いきなり、逃げだしたではありませんか。
 怪老人は魔法使いみたいなやつで、ゆだんがならないので、この老人だけは、手錠をかけたうえに、からだを、ほそびきでしばって、そのはじを、ひとりの刑事がにぎっていたのです。
 ですから、老人が逃げだすと、刑事も、ほそびきにひっぱられて、いっしょに、車の外へころがりだしてしまいました。
 しかし、さすがは中村警部の部下の刑事です。ころがっても、けっして、ほそびきは、はなしません。すぐに起きなおって、怪老人を、ひきもどそうとしました。
 怪老人は、おそろしい力で、そのまま、ズルズルと刑事をひっぱって、そばにあった公衆電話の箱の中へ、とびこんで、パタンとドアをしめてしまいました。
 それでも刑事は、ほそびきを、はなしません。すぐに電話の箱のドアにとびついていきましたが、そのとき、ガチャンと音がして、箱の中がまっくらになりました。怪老人が電球を割って、あかりをけしたのです。
「こら、出てこい。こんな箱の中へはいったって、逃げられるわけはないぞ。ばかなまねをしないで、はやく出てこい。」
 刑事がどなりますと、スーッとドアが開いて、怪老人が出てきました。
「ウフフフ……、ちょっと、いたずらをしてみたまでだよ。安心しな。おれは、逃げやしないよ。」
 老人はそういって、おとなしく、箱自動車のほうへ連れられていき、車の中へはいりました。
 そうして、もとの場所へ腰かけたのを見ると、刑事は、
「あっ。」
と、おどろいてしまいました。
 そこにいるのは、あの白ひげの老人とは、にてもにつかない、ひとりの若い男だったからです。顔も、まるでちがっています。あの老人よりはがっしりしたからだつきで、背も高いようです。
 ああ、いったいこれは、どうしたことでしょう。刑事は、ほそびきを一度もはなしませんでした。怪老人は、ただちょっとの間、公衆電話の箱の中へはいったばかりです。
 その中に、この若い男がかくれていて、老人とすりかわったのでしょうか。しかし、そんなことは、できっこありません。刑事は、ほそびきの二本のはじを、にぎっていたのです。老人のほそびきをといて、この男がしばられるなんて、そんなことが、できるはずはないのです。
「さては、きさま、老人に変装していたんだなっ。電話ボックスの中で、つけひげや、しらがのかつらをとって、そんな顔にかわったんだなっ。」
 刑事がどなりつけますと、若者は、あわててわけをはなしました。
「いえ、そうじゃありません。ぼくは、このすぐそばのアサヒ屋という文房具店の店員です。つい三十分ぐらいまえ、あの電話ボックスのそばを歩いていますと、ふたりの男がいきなり、くらやみの中から近づいてきて、ぼくに手錠をはめ、こんなにしばって、電話ボックスの中へ押しこんでしまったのです。そのとき、ひどく、頭をなぐられたので、気が遠くなって、グッタリしていたのですが、そこへ、あの老人がとびこんできて、いきなり電球を割ってしまったのです。そして、手錠をはめられた手でナイフを使って、刑事さんのにぎっているなわを切って、ぼくのからだにまきつけてあるなわとつなぎあわせて、じぶんはボックスのすみにかくれて、ぼくを外へつきだしたのです。」
「えっ、ほんとうか。それじゃ、なわをつないだむすびめを、見せてみろ。」
「ここですよ。ほら、刑事さんのにぎっている二本のなわと、ぼくをしばったなわとが、むすんであるでしょう。」
 見ると、たしかに、若者の右のわきの下に、そのむすびめが見つかりました。
「それじゃ、あの老人は、まだボックスの中に、かくれているんだなっ。よしっ。」
 自動車に乗っていた、別の刑事が、いきなりとびだしていって、懐中電灯で、電話ボックスの中をしらべましたが、老人はいつのまに逃げたのか、かげもかたちもありませんでした。
 刑事は自動車に帰ってくると、若者に向かって、
「きみ、それならそうと、なぜいわなかったんだ。まっくらで、よくわからないので、こっちは、きみをあの老人と思いこんでひっぱってきたのだ。きみは、なぜだまっていたんだ。」
と、せめましたが、若者は、まだぼんやりした顔で、
「ひどく頭をなぐられたんで、ぼうっとしていて、なにがなんだか、わからなかったのです。」
と、答えました。
「きみがアサヒ屋の店員だというのは、ほんとうだろうな。」
「ほんとうですとも。すぐそこですから、主人を呼んできてください。ぼくがにせものでないことがわかりますよ。」
 そこで、刑事のひとりがアサヒ屋を捜して、主人をひっぱってきました。そして、若者の顔を見せますと、松井(まつい)という店員にちがいないことがわかりました。
「そうか。きみは、えらいさいなんだったな。よろしい、それじゃ、松井君のなわをといてやるから、連れてかえりなさい。」
 そこで、松井という店員はなわをとき、手錠をはずしてもらって、主人といっしょに、帰っていきました。パトカーは、このことを報告するために、警視庁へいそぎました。
 アサヒ屋の主人と、店員の松井は、暗い町をぶらぶらとあるきながら、みょうなことを、話しあっていました。
「ウフフフフ、やっこさんたち、うまく一ぱいくわされたな。まさか、アサヒ屋という文房具屋が、おれの手下だとは、気がつかないからね。」
「うまくいきましたね。それにしても、かしらの変装はすばらしいですね。さっきまでよぼよぼのじいさんだったのが、たちまち二十代の若者になっちゃうのですからね。電球を割って、刑事のひっぱっているなわを切って、それをもう一度、つなぎあわせた、それだけのトリックで、やっこさんたち、まんまとだまされてしまいましたね。かしらの知恵は、たいしたもんですよ。」
 やっぱりそうでした。この若者は怪老人の変装だったのです。かつらや、つけひげ、つけまゆげをとり、顔のしわをふきとって若者になりすましたのです。怪老人は、ほんとうは、若い男なのかもしれません。そして、立ててあった洋服のえりを、ちゃんと折り曲げて、服までかわったように、見せかけたのでした。
 アサヒ屋の主人は、老人がつかまったことを知ると、さっそく手配をしたのです。パトロールカーが電話ボックスの前をとおりかかるのを見すまして、なかまの黒い自動車をぶっつけさせたのです。そして、怪老人がこのトリックを使うことが、できるようにしたのでした。
 若者になりすました怪老人は、アサヒ屋の主人にわかれると、そのまま、どことも知れず、立ち去ってしまいました。

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