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松山着18時15分の死者8-1

时间: 2019-04-27    进入日语论坛
核心提示: 仲居が海草サラダと、二人前の焼き魚を運んできた。 谷田実憲は、お銚子をさらに二本追加し、「肝心なのは、帰りよりも行きの
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 仲居が海草サラダと、二人前の焼き魚を運んできた。
 谷田実憲は、お銚子をさらに二本追加し、
「肝心なのは、帰りよりも行きのルートだ」
 と、他のコピーを、浦上伸介に示した。
 谷田が言う「行きのルート」とは、殺人現場へ向かう足取りのことだった。
「淡路警部も吐息していたが、これがまた、どうにもならないんだな」
「意味がよく分かりません。どういうことですか」
「阿波池田を十三時十一分に発車する土讃本線の下りに乗っていたのでは、犯行時刻までに、犯行現場へ到着することが、不可能ということらしい」
 高橋美津枝の運転するレンタカーが、二人のOLによって目撃されたのは、午後六時二十六分頃だ。
「堀井隆生が主張する大歩危峡観光を、省略したとしても、犯行時刻までに松山へ引き返すことができないんだな」
「そんなばかな話はないでしょう。真犯人《ほんぼし》は、堀井以外にいないのですよ」
 浦上が思わず激昂《げきこう》すると、
「オレも淡路警部と同じことで、コピーのどっちから検討すべきか迷ったのだがね」
 谷田は浦上をなだめ、
「少なくとも、ここに提示された範囲では、堀井は松山へ行くことができないし、東京へは不自然でなく帰ってくることができるってわけさ」
 と、猪口《ちよく》をあけた。
 下り列車に乗っていたのでは、犯行時間に間に合わない。それが事実なら、堀井は、その列車に乗らなかったということだろう。
「偽証ですかね」
 すぐにぴんとくるのは、そのことだった。(矢島部長刑事も一時気にかけたが)松山から阿波池田まで堀井に同行した直良は、『不二通商』の下請け会社の経営者だ。
「下請けなら、親会社の課長の頼みに対して、首を横に振るわけにはいかないでしょう」
「さっきも言ったように、捜査本部では、五人の証言をいずれも事実と断定している。直良さんという製材工場主は池田の素封家《そほうか》の出でね、そんなことに加担する人柄ではないそうだ」
「分かるもんですか。宇和島西署へ、無実のぼくを留置しようとした、刑事《でか》さんたちの捜査でしょ」
「堀井が、高知行きの下りに乗ったことを証明する人間は、もう一人いるぞ。この人だ」
 谷田は最初のコピーを差し出した。
 もう一人は、たまたま阿波池田駅で紹介された直良の知人、『大王製紙』の社員岩川だった。
「これは四国を代表する一流企業の社員だぞ」
「うん、伊予三島《いよみしま》に大きい工場がありましたね。あれか」
 浦上は予讃本線に乗って瀬戸内海沿いを走った、三日前を思い出した。
「大企業の社員だから、信用するというのではない」
 谷田は前言を訂正した。
「この岩川さんという人は、それまで堀井とは一面識もなく、何の関係もなかったわけだろ」
「偶然の出遇いという点からいえば、和平興産社長の急死と同じようなものですか」
「これまたアリバイ工作であるなら、直良一人で済ませようと思っていた矢先に、堀井にとっては強力な証人が出現したことになるね」
「ともあれ、それが出発点なら、出発点の証人に当たらなければなりませんね」
「きみを逮捕しようとした捜査本部の調査では、信用できないか」
「電話一本で済むことです。一応確かめてきます」
 浦上は腕時計を見ながら、立ち上がり、レジの横の電話を借りた。
 午後七時を回っている。
 退社時間は過ぎているが、浦上は愛媛県伊予三島局の一〇四番に問い合わせ、『大王製紙』四国本社へかけた。
 宿直に事情を説明して、総務部に勤務する岩川の、自宅の電話番号を教えてもらった。
 岩川は、本社近くの社宅に入っていた。
「さっきは松山南署からお電話がありましたけど、あの方に何かあったのですか」
 と、浦上の質問に対して、逆に問いかけてくる岩川は、いかにも誠実そうな、口の利き方だった。
 岩川は、堀井が矢島部長刑事に説明した経緯をそのとおりだと肯定し、
「私は本家へ行くため、阿波川口で下車しましたが、あの方はそのまま下りに乗って行かれました」
 と、はっきりした声でこたえた。
 その岩川に、うそをついている感じはまったくなかったし、偽証をしなければならない立場でもなかった。
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