笑府・広笑府
酒倉に棲んでいる鼠、いつも米倉の鼠に米をふるまわれているので、いちどお返しをしようと思って酒倉へ招待し、米倉の鼠の尻尾を口にくわえて酒甕(さけがめ)の中へつり下げた。米倉の鼠は、口が酒にとどいたので、飲む前に、
「いただきます」
といったところ、酒倉の鼠が、
「どうぞ」
といったので、どぶんと酒の中へ落ち、甕の縁(ふち)へはいあがろうとしてばたばたともがいた。酒倉の鼠はその音をきいて、
「いただきますといったばかりなのに、あいつ、もう酔っぱらって暴れているようだな」