笑府
遠方からきた客、長時間いたが、その家には鶏や家鴨(あひる)がたくさん飼ってあるにもかかわらず、いっこうに食事を出そうとしないので、業(ごう)を煮やして、
「庖丁(ほうちよう)を貸してくださいませんか」
といった。
「どうなさるのです」
と主人がきく。
「わたしの乗ってきた馬を料理して、ごいっしょに食べようと思いまして」
「帰りはどうなさるつもりです?」
「お宅にたくさんいる鶏か家鴨の中から、ほんの一羽だけお借りして、それに乗って帰ることにします」