笑府
余姚(よよう)から松江(しようこう)へ出稼ぎに行って家庭教師をしている先生が帰郷したというので、親戚友人がおしかけて行って、松江のことをあれこれとたずねた。
先生は得意になって松江の賑わいぶりを話し、
「普照寺の前では魚市が開かれるが、その種類の多いことといったら、とても数えきれるものではない」
という。人々がうらやましそうに、
「あなたはその魚を食べたのですか」
ときくと、先生、
「いや、なに。わしはただ、眼で満腹するほど見ただけだ」
人々はそれをきくと、みんなで先生を取り囲んでその眼をなめだした。