雪濤諧史
国子監の博士が、鶏を一羽殺し、大根といっしょに料理して、二十人あまりの学生を招待した。
その鶏の魂が冥土へ行って役人に訴えた。
「鶏を殺して客をもてなすことは、誰しもよくやることです。しかし、たった一羽の鶏を二十人あまりもの客にふるまうとは、不都合ではありませんか」
「いくらなんでも、そのようなしみったれたことをする者があるとは思われぬ。嘘であろう」
「嘘ではございません。大根が証言をしてくれるでしょう」
さっそく大根を呼び出して訊問すると、大根のいうには、
「鶏のいうことは嘘です。あの日の博士の料理に参加したのはわたくしだけでした。鶏など一かけらも参加していなかったと思います」