笑苑千金
〓京(べんけい)の孟良(もうりよう)一家は大金持だったが、たいへんなけちんぼうだった。父親は病気になったが医者にかかろうとはせず、
「せがれや、病気が長びいてなかなかなおらんので、醴泉観(れいせんかん)(〓京東郊の道教の寺)へ平癒祈願に行きたいのだが、わしは歩けんから、おまえ、おぶって行ってくれ」
といった。孟良はそこで父親をおぶって行ったが、〓橋(べんきよう)を渡るとき、船を引く綱に足をひっかけてころんだ拍子に、父親は投げ出されて川へ落ちた。近くにいた船頭が孟良に、
「一両くれたら、川へ飛び込んで助けてあげるよ」
というと、孟良は首を振って、
「三銭やるから助けてくれ」
「いやだ。一両くれなきゃいやだ」
「それじゃ四銭やるから……」
「いやだ」
すると父親があっぷあっぷしながら、孟良にいった。
「せがれや、五銭以上は一銭も出してはならんぞ」