笑苑千金
ある大金持が誤って人を殺したため、死刑の身代りになる者を大金で雇うことにした。すると、三千貫くれたら身代りになってもよいと申し出た男がいた。ある人がその男に、
「いくら金をもらっても、自分が死んでしまうんでは仕様がないじゃないか」
というと、その男、
「いや、そんなことはない。一千貫は父母の老後を養う金にし、一千貫は七日七日の法事をしてもらうための金にする。あとの一千貫はおれの墓の傍に積んでおくのだ」
「父母の老後を養うのはよいことだ。七日七日の法事をしてもらうのもよいことだろう。だが墓の傍に積んでおくというのは、どういうわけだ」
「墓の前を通る人たちが、死んだ男はそんなに金持だったのかと思ってくれれば、それでいいんだ」