笑府
ある男、死んで閻魔大王の前に引き出され、悪事をした罰として驢馬の姿に変えられた。ところが、その男には身に覚えのないことだったので大いに弁明したところ、疑いが晴れて、もとの姿にもどしてもらい、娑婆へ帰ることがゆるされた。
男は大よろこびで家に帰ったが、あまり急いできたために一物だけが驢馬のままだった。男ははじめてそのことに気づき、
「しまった! もういちど冥土へ行って付けかえてもらってくる」
といい、また出かけようとすると、女房が引きとめて、
「また行ったら、大王さまがもう帰らせてくれないかもしれないよ。わたしはそれで我慢するから、あなたも我慢しなさいよ」