笑府
ある夫婦、子どもが寝静まったのを見て、事を行ないだした。まもなく妻は感極(きわ)まって、しきりに死ぬ死ぬと叫びだす。
二人の子どもがその声で目をさましたが、夫婦は気がつかず、夢中になってつづけている。兄の方がそのありさまを見て、くすくす笑いだした。母親は恥かしいやら腹が立つやら、いきなり腕をのばして兄の頭をなぐった。すると弟が兄にささやいた。
「兄さん、なぐられるのはあたりまえだよ。母さんが苦しがって、もう死ぬもう死ぬといっているのに、兄さんったら、泣きもせずに笑うんだもん」