笑林広記
ある男、夜中に妾の部屋へ行こうと思い、
「便所へ行く。すぐ帰ってくるよ」
といったが、女房がゆるしてくれないので、
「邪推するなよ。誓うよ。もし妾のところへ行ったらわたしは天罰を受けて犬になります!」
と誓った。しかし女房は信用せず、亭主の足に綱をつないで行かせた。
亭主は部屋から出ると、足の綱をほどいて犬に縛りつけ、そのまま妾の部屋へ行った。
女房は亭主がいつまでたってももどってこないので、綱をたぐり寄せてさわってみると、なんと犬だったので、おどろいて肝をつぶし、
「あの性(しよう)わる亭主、あんな誓いをしてわたしをだましたのかと思ったら、ほんとうに天罰があたって犬になってしまった!」