警世通言(第二巻)
ある日、荘子(そうじ)が南華(なんか)山の麓を散歩していると、まだ盛り土の乾かない新しい塚の前に喪服を着た若い女が坐って、白絹の団扇で塚をあおいでいた。不思議に思ってわけをたずねると、女はいった。
「塚の中はわたしの夫で、生きていたときには、死んでもはなれられないほど愛しあっておりましたが、死ぬときわたしに、もし再婚するなら葬式がすんで墓の土が乾いてしまってからなら、してもよいと遺言しました。それでわたしは、新しく盛ったこの土を何とか早く乾かそうと思って、こうしてあおいでいるのです」