笑林広記
いちども女色を経験したことのない男、あれがどんな形をしているものか見当がつかないので、人にたずねてみたところ、
「まあ、目が縦についているような形と思えばよい」
と教えられた。その後、急に女を買いに行きたくなったが、どこに女郎屋があるのかわからない。町をあちこち歩きまわっていると、目の形を幾つもかいた目医者の看板が、偶然横になっているのを見つけ、この家にちがいないと思ってはいって行って、
「女を買いたい」
というと、医者が怒って、
「おれの家は女郎屋じゃない!」
という。男は怪訝(けげん)な顔をして、
「女郎屋でないなら、なんのためにあんなにたくさん、あれの形をかいた看板を出しておくのだ。ああ、わかった。あんたは、あれの医者か」