笑府
閻魔大王が地獄の鬼卒に、娑婆へ行って名医をさがしてくるように命じて、
「よいか。門前に怨めしそうな亡霊のいない医者が名医だぞ」
と教えた。鬼卒は大王にいわれたとおりにして名医をさがしたが、どこの医者の門前にも亡霊が群れをなしていて、名医は見つからない。ところが、最後にある医者の家へ行ったところ、その門前にはただ一人だけしか亡霊がいない。
「ああ、やっとさがしあてた。これこそ名医にちがいない」
と思い、近所の者にたずねてみたところ、その医者は昨日看板を出したばかりの医者であった。