笑府
ある貴人が寺へ遊びに行き、和尚にたずねた。
「あなたは生(なま)ぐさものを食べますか」
「いや、あまりいただきません、ただ、酒を飲むときに少しばかり……」
「なに、酒も飲むのですか」
「いや、たいして飲みません。ただ、舅(しゆうと)がきたときに相伴(しようばん)をして少しばかり……」
「なに、舅だと? そうすると、妻も持っているのか。けしからん! 明日にでも知事にいって度牒(どちよう)(僧侶の免許状)を取りあげてやる!」
貴人が憤然としてそういうと、和尚は平然として、
「いや、度牒はもうありません。一昨年、盗みを働いていたことが露見して、そのとき取りあげられてしまいましたので」