艾子外語・笑府
籠をさげた男が、かぼそい声で、
「団子いらんかね、団子いらんかね」
といいながら歩いている。
「体の具合でもわるいのかね。息もたえだえな様子じゃないか」
ときくと、
「すきっ腹で荷を持っているので、力が出ないのですよ」
という。
「腹が減っているのなら、籠の中の団子を食えばよかろう」
「いや、この団子はみんな饐(す)えているものだから……。だから、早く売ってしまわないことには……」
そして「団子いらんかね、団子いらんかね」といいながら歩いて行った。