笑府
ある家のおかかえの髪結(かみゆい)が泥棒にはいられ、せっかくためた金をごっそりと取られてしまった。翌日、しょんぼりしていると、主人が、
「どうした。いやに元気がないじゃないか」
ときくので、泥棒に金を取られたことを話して、
「しかし、まあ、泥棒にただで髪を結ってやったと思えばすむことでございます」
といったところ、主人は機嫌をそこねてその髪結をお払い箱にし、ほかの者にかえた。
その新しい髪結が、
「これまでお宅にかかえられていたあの男を、どうしてわたしにかえられたのでしょうか」
ときいたので、主人がわけを話すと、
「そうでしたか。そんなに口下手な男なら、お払い箱になったらもう暮してはいけないでしょう」