韓非子(外儲説篇)・淮南子(道応訓篇)
子罕(しかん)は宋の宰相になったとき、宋君に進言した。
「賞与は民のよろこぶところですから、わが君みずからとり行なってください。刑罰は民のにくむところですから、わたくしにお命じください」
「そなたは悪役を買って出ようというのだな。よろしい。そうすれば諸侯もわたしに一目(もく)置くようになろう」
こうして宋君は、酷令をくだしたり大臣を誅罰したりするときには、いつも、
「子罕に問え」
といって、彼にまかせた。そのため、大臣たちはみな子罕に追随し、人民は子罕をおそれ、一年もたたぬうちに子罕は宋君をしのいで国権を握るようになった。