雪濤諧史
嘉靖(かせい)年間、蜀(しよく)の人で弁舌の才のある御史(ぎよし)(司法官)がいた。ある宦官(かんがん)がこの御史をからかってやろうと思い、鼠を一匹縛(しば)って行って、
「この鼠はわたしの衣服をかじりました。どうか御史どの、罪を裁いてください」
といった。すると御史は即座に裁いていった。
「その鼠があなたの衣服をかじったのならば、笞(むち)打ちの刑や流刑では軽すぎましょう。しかし凌遅(りようち)(八つ裂きの刑)や絞首刑は重すぎます。従って腐刑(陰茎切断の刑)に処するのが適当でしょう」
宦官は御史が自分をからかっていることを知ったが、しかし見事な裁きだと感服した。