笑府
短気な男がいて、いつも妻にいっていた。
「この世におれほど短気な者はおるまい。おれはきっと、いらだち死にをするだろう」
この男、ある日うどん屋へはいるや否や、
「さっさとうどんを持ってこい!」
とどなった。すると、まだその言葉の終らないうちに主人がうどんを持ってきたが、テーブルの上へ碗を置くや否やうどんをぶちあけて、
「さっさと食べんか。早く碗を洗わなければならんのだ」
といった。
男は怒って家に帰るなり、妻にいった。
「あいつに勝つためには、おれはさっさと死ぬよりほかない」
妻はそれを聞くと、さっさとよそへ再婚した。
さて、再婚して一夜あけると、二度目の夫がいった。
「おまえを離縁する」
妻がおどろいて、
「わたしのどこがわるいのです」
ときくと、
「結婚したのに、まだ子供が出来ないじゃないか」