巧言令色
笑賛
唐の大暦(たいれき)年間、荊州(けいしゆう)に馮希楽(ふうきらく)という人がいた。この人、おべんちゃらがうまく、あるとき長林(ちようりん)県の知事に会って酒をふるまわれたところ、こういった。
「知事どのの仁風(じんぷう)に感化されて、虎や狼も県境から出て行ってしまいました」
そういっているところへ、役人がはいってきて、
「昨夜、虎があらわれて人を食いました」
と報告した。知事が、
「これはどうしたことだ」
ときくと、馮希楽は、
「それは、ただちょっと通りかかっただけのことでございます」