世説新語(徳行篇)
晋の范宣(はんせん)は、廉潔で質素な人であった。
あるとき太守の韓伯(かんはく)が絹百匹を贈ったが受け取らなかった。五十匹に減らしたが、やはり受け取らない。韓伯は半分ずつ減らしていき、最後には一匹にしたが、それでもついに受け取らなかった。
その後、韓伯は范宣と車に同乗したとき、絹二丈を半分に裂いて范宣にさし出し、
「いくらなんでも、奥さんに下穿きをはかせないわけにはいかないでしょう」
といった。
そこで范宣も、笑いながら受け取った。