笑府
ある人、客と対談中、虱(しらみ)をつかまえたが、客の手前、口へ入れて噛みつぶすわけにもいかず、爪でおしつぶすわけにもいかず、客にさとられないようにそっと両指でひねりつぶした。
殺された虱は、それをあまりにも惨酷な刑罰だといって、閻魔大王に訴えた。そこで大王はその人を捕えて虱と対決をさせた。対決の結果、その人は釈放され、またこの世にもどってきた。
客は対談中に急死した人が生き返ったときいて、また訪ねて行った。挨拶がすんで席につき、しばらくすると、また一匹の虱が噛みついたので、その人はいった。
「お話の途中ですが、不逞の輩をつかまえて処罰するまで、ちょっとお待ちください。また告訴されると面倒ですから」