笑得好
ある家の婆さん、数珠(じゆず)をつまぐりながら、
「南無阿弥陀仏(な ん ま い だ)、南無阿弥陀仏……」
ととなえていたが、すぐつづけて下男を呼び、
「鍋に蟻がたくさんたかっているから、焼き殺しておくれ。わたしゃ、あれが大嫌いなんだよ」
といいつけ、すぐまた大声で、
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……」
ととなえ、またすぐつづけて下男を呼び、
「鍋の下の灰をすっかり掻(か)き出しといておくれ。うちの箕(み)を使うんじゃないよ。焼き焦がすといかんからね。隣りの張(ちよう)さんとこから借りてきて、それを使うんだよ。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……」