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美女入門85

时间: 2019-07-30    进入日语论坛
核心提示:センチメンタル・フォト・ストーリー 引っ越しの整理をしていたら、出てくるわ、出てくるわ(というほど数は多くないが)、昔の
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 センチメンタル・フォト・ストーリー
 
 
 引っ越しの整理をしていたら、出てくるわ、出てくるわ(というほど数は多くないが)、昔の彼の写真と手紙。
 やっぱり長く独身を通していれば、それなりのことがあったのね、とつくづく思う。海外で暮らしていた男と、遠距離恋愛をしていた頃のエアメイルもいっぱい出てきて、私をつうんとせつなくさせるの。そういえば、この彼からの手紙を、当時テツオに見せたところ(あたりさわりのないものを選んでだけどね)、
「あんたは中学生と文通しているのか」
 とせせら笑われた。確かにガテン系の彼は、字もヘタだったし漢字も知らなかった。あの時はテツオのことを「何てイヤな奴」と思ったけど、やはりこうして読むと字がヒドいわ……。
 別の彼とのツーショットが出てきた。雪の中で二人で撮ったお気に入りの一枚。うんと大きく引き伸ばしたやつだ。こういうものは夫に見せられないので、秘書のハタケヤマに見せびらかす。
「わー、ハヤシさんの昔の彼ってハンサムなんですねー」
 と言われて、私はすごく嬉しかった。
「ハヤシさんとすごくお似合いですよ。年まわりもいい感じ。見るからに仲よしの二人っていう写真ですよねー」
 そうでしょう、そうでしょう、と私はすっかり嬉しくなった。私はマリアンなんかと違って、別れた男の悪口は絶対に言わない女である。そりゃ別離の直後は恨んだこともあるし、ワルグチをまわりに言ったこともある。けれども縁あって仲よくなった二人じゃないか。胸が張り裂けるぐらい好きになった男である。どうして悪口なんか言えようか。
 少女の頃、私は恋愛小説をいっぱい読む想像過多の女のコだったが、現実は何ひとつ楽しいことが起こらなかった。いくら昔の、田舎の学校といっても、そろそろまわりではボーイフレンドが出来始める。中学生になったとたん、このあいだまで一緒にハナ垂らしてた友人が、男の子から手紙をもらったりする。それなのに私には何も起こらない。
 ひとり胸を痛め、いろいろなことを考えたものだ。
 私には一生、恋人なんか現れないんじゃないかしらん。「好き」とか「愛してる」なんて誰からも言ってもらえないんじゃないか。そんなことを考えると、悲しくて悲しくて、涙が出てきたものである。
 ところが不思議なものね。年頃になればちゃんとそういう男の人が現れる。生まれて初めて恋人が出来た時、私はその人を質問責めにしたかった。
「私でいいの? 本当にいいの?」
 彼の目に、私はどう映っているのかしらん。いくら恋する男の目で見ても、ぜい肉はぜい肉、垂れ目は垂れ目じゃないかしらん。しかし心から�可愛い�とか言ってくれちゃって、あの時は奇跡が起こったような気がしたなあ……。
 彼と一緒に焼肉を食べる。うんとニンニクくさいゲップをしちゃった。そして彼のところへお泊まりする。酔っぱらってイビキをかいたみたい。次の日の朝、彼からそう言われた。けれども不思議なことに恋は続く。私にはどうしても解せなかった。
 雪の中に一緒に写っている男の人、彼のことを考えると、今でも私は涙が出てきそうになる。あの頃の私は、奇跡がどこまでも続くものだろうかと彼の心を試そうとしたのだ。傲慢《ごうまん》になっていたし、嫌われることをいっぱいした。そして本当に嫌われたのである。
 彼からの別れの手紙も、ちゃんと保存してある。随分時間がたつのに、まだ読む勇気がない。ああ、あの頃の私に今の私の知恵があれば、悲しい結末は迎えなかったんじゃないかしらん……。
 が、甘い記憶ばかりではない。私がデブの頃の写真もいっぱい出てきた。今でもデブの部類に入るが、この頃の太り方といったらちょっと異常といってもいいぐらい。顔は二重|顎《あご》だし、お腹のへんときたら新弟子検査クラスのお相撲さんだ。しつこいようだが、私は�女ロバート・デ・ニーロ�と呼ばれ、体重が十数キロ変動する。が、写真を見たところ、この十年ぐらいのうち七年は超デブのままでいたのね。
 そんな感慨にふけっている最中、テツオから電話がかかってきた。
「あのさ、今度�おしゃれ有名人のインテリア拝見�っていうのに出てよ。嬉しいだろー、あんたが�おしゃれ有名人�なんだぜー」
 いつもだったらこういう嫌味に腹を立てる私だが、素直に喜んだ。
「う、うれしい。苦節十年。私もやっと�おしゃれ有名人�って言われるようになったのね。ねぇ、テツオさん、昔の写真を見てたら、私ってすごいデブ。すごいダサイ。あんな私をよく『アンアン』のグラビアに出してくれたわね。連載持たせてくれたわねー。ありがとねー」
 私の素直さに、さすがのテツオも驚いたようだ。
「お礼を言うなら、あの時の編集長○○さんに言ってよ」
 そうか、○○さん、ありがとう。あの時の私を出してくれたなんて、初めて「愛してる」って言ってくれた男の人と同じぐらい感謝します。○○さんは女なんだけどさ。それにしても昔の写真見るって、本当に心が洗われる。謙虚になるし、やさしくなるわ。今日のこのページはいつもと違うでしょ。
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