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美女入門88

时间: 2019-07-30    进入日语论坛
核心提示:アオノリ女 暑くなりましたけど、皆さんお元気でしょうか。バカンスのお供に林真理子著『美女入門』買っていただけましたでしょ
(单词翻译:双击或拖选)
 アオノリ女
 
 
 暑くなりましたけど、皆さんお元気でしょうか。バカンスのお供に林真理子著『美女入門』買っていただけましたでしょうか。これ一冊あれば、誰でも美人になり、誰でもモテるようになると評判です。
 こっぱずかしいほど大きな写真が新聞に載った次の日に、テツオから言われた。
「あれだけ大きな広告をして、それで売れなかったら、あんたの人気がもう無いっていうことだよね」
 こういうことを言われると、本当につらいデス。作家も芸能人と同じで、人気という人の心に頼る最もあやふやな職業である。私は人気絶頂の、今が旬のタレントさんたちを見ていると、痛々しい思いにとらわれることがある。
「こんなに今は凄《すご》い人気でも、いつかは下り坂になる時がある。その時どうやって過ごしていくんだろうか……」
 引っ越しの時、昔つくってもらったパネルがいっぱい出てきた。その中にかつての超アイドルTちゃんと対談した時のものがあった。あれは十二年前のことになるかしらん。彼は「アンアン」のセクシーな男アンケートで、トップの座に輝いたのだ。二人で対談したレストランのまわりにも、ファンの女の子がどこでかぎつけてきたのか、二、三十人集まっていたっけ。それがさ、いろんなことがあって数年後には「嫌いな男」ナンバー1になり、今じゃ名前もあまり聞かなくなった。若いコに、
「Tちゃんって、知ってる?」
 と聞こうものなら、
「ああ、ビッグだった人ね」
 なんて返ってくる悲しさ。
 人気というものが、ブレイクしたまま何年もいけるはずはない。昇ってきたものは必ず下がっていく。その時に踏ん張り、うんと頑張って安定した場所を見つけていくのは、とてもむずかしいことだ。二枚目や美女が、バラエティや奥様番組にクラ替えすることなく、自分の場所をキープするのは本当に大変なことなんだから。そういう意味でW浅野(この言葉ももう古いかナ)なんて、えらいなあと感動してしまう。キョンキョンだって新鮮ないいイメージのまま、時折しっとりとしたミセス風を見せて、もはや人気はカリスマがかっている。先週私を感動させてくれたユーミンなんか、もう不動といおうか何といおうか、映画界でいえば高倉健さん、吉永小百合さんクラス。もはや殿堂入りといってもいい。
 さて、私らの業界は、芸能人の人々と違い、中年になってから急に人気が出る、ということもあり得る。この頃、やたらと仲がいい版画家の山本容子さんなど、その代表であろう。もともと絵画の世界では大変な人気を博していたのであるが、最近になってからその美貌《びぼう》とセンスが買われ、雑誌グラビアやCMに引っ張りだこだ。私は七、八年前から、何かの集まりで顔を合わせることがあったが、ちょっと苦手なタイプかなあと思っていた。美術をやる女性は気難しそうだし、端整な風貌がちょっと近寄りがたい雰囲気だ。ところがひょんなことからしょっちゅう会うようになり、今ではよく遊んでもらっている。私より幾つかお姉さまなんだけど、とにかく綺麗《きれい》なの、カッコいいの。いつもジル・サンダーの服をさらっと着て、小物使いがすごくうまい。ついこのあいだシャトー・ラトゥールを飲む集いがあったのだが、容子さんはブルーのノースリーブのワンピースを着て、昔のお人形さんのようだった。アクアブルーのドレスに合わせて、バッグは薄いベージュのルイ・ヴィトンのヴェルニシリーズのやつ。それからふわふわしたベージュの絹のスカーフを手に持っていた。
 ちょうど大雨の日のことで、私はいったんサテンのシューズを履きかけたが、やっぱりやめ、濡《ぬ》れても構わない布のイマイチ靴にした。それなのに容子さんたら、真っ白なフラットシューズを履いている。私がおしゃれな人を見て、つくづくかなわない、と思うのはこうした雨の日だ。濡れるとイヤだからといってボロ靴を履く精神を、彼女たちは最も嫌悪するみたいだ。いつ会ってもどこで会っても、コーディネイトが万全である。私のように言い訳しながら、ヘンなものを着たりはしない。
 さらに私は容子さんを観察した。するとあることがわかった。前から気づいていたことであるが、美女はマメに化粧を直すのだ。もちろん人前ではない。タクシーに乗った時とか、ちょっと化粧室に立った時など、すぐにコンパクトを開くのである。私なんか朝化粧をすると、そのままのことが多い。が、食べた後はものすごく注意している。一度、ちょっといい男とフグを食べた後、歯の間にアサツキがはさまっていたことがある。お好み焼きも要注意で、アオノリがつきやすい。
 唇や歯にそういうものがついていたら、どんな美女も間抜けに見える。私は一度、大嫌いな女が唇に海苔《のり》をつけたままなのを見て、ザマーミロと思ったことがある。
 私はどんなに勧められても、男の人と一緒の時はイカスミのスパゲッティを食べない。それから、あぶないナ、と思った時はナプキンでうんと力を込めて拭《ぬぐ》う。秘密兵器はナイフで、光る面を鏡代わりに使う。これほどしても、私は口元によく何かをくっつけてしまう。美女というのは、こういう不運さと無縁の人かもしれない。
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