九一 附馬牛村のある部落の某という家では、先代に一人の六部が来て泊って、そのまま出て行く姿を見た者がなかったなどという話がある。近頃になってからこの家に十になるかならぬくらいの女の児が、紅《あか》い振袖を着て紅い扇《せん》子《す》を持って現われ、踊りを踊りながら出て行って、下窪という家にはいったという噂がたち、それからこの両家がケエッチヤ(裏と表)になったといっている。その下窪の家では、近所の娘などが用があって不意に行くと、神棚の下に座敷ワラシがうずくまっていて、びっくりして戻って来たという話がある。